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 緊急事態宣言が解除され、人々の多くがマスクをしていること以外は一見すると以前の日常に戻ったような印象を受ける。しかし、東京都内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数は100人を超えたままである(2020年7月7日時点)。重傷者数は減っているものの、医療崩壊が今度こそ発生してしまうのではないかという恐怖が市中に蔓延している。

 その中で経済活動を行っていく上では、うがい、手洗い、マスクによる自己防御が欠かせないが、サービスを提供する商業施設には可能な限りの抗菌対策が求められている。入口のアルコール消毒や、飲食店でドアや手すり、テーブルなどを拭いているシーンが連日ニュースで流れているが、通常業務に加えてこの拭く作業を継続することはコストパフォーマンスの観点からも現実的ではない。こうした「手動」による対策は長続きしにくく、「自動化・仕組み化」が求められていくと考える。

 本記事においては、新型コロナウイルスを含めた菌やウイルスに対抗する「抗菌・抗ウイルス技術」を特許の視点で俯瞰(ふかん)した。その結果、3つのキーワードが浮かび上がってきた。この3つのキーワードを踏まえて、今後の抗菌・抗ウイルス技術を考察する。

 本記事では、菌・カビ・ウイルスの違い、および殺菌・抗菌・除菌の違いを認識しつつも、特許の記述においては一体的に記述されてものが多いため、厳密な違いには言及せず、菌・カビ・ウイルス対策のグローバルな技術から今後増加すると予想される殺菌、抗菌、除菌に関連する技術を俯瞰する。以降では、菌・カビ・ウイルスを総称して「菌」と呼称し、殺菌・抗菌・除菌を総称して「抗菌」と呼称する。ただし、新型コロナウイルスについては、RNAウイルスかつエンベロープありのウイルスであるため、当該部分を記事内で言及するときはウイルスという言葉を用いる。合わせて、本記事は、新型コロナウイルスに対して、特定の方法が有効であることを示すものではない点も留意されたい。

 なお、本記事に掲載している特許俯瞰図の母集団については、知財情報を基にコンサルティングサービスを提供しているイーパテント(東京都港区)に幅広く抗菌技術をカバーする検索式を構築してもらった。俯瞰図の中から特に抗菌(antimicrobial)について特徴的に語られている領域を抜き出し、考察していく。

抗菌技術自体は既に確立されている

 俯瞰図全体を見ると、中央から右上側に衣類・繊維に関連した抗菌対策、右下側に建築材料や殺菌(UV、オゾン)の特許が存在している(図1)。中央付近には金属系抗菌剤として定番となっている銀系、チタン系、グラフェン系、亜鉛系、銅系、ゼオライトおよび第4級アンモニウム塩の特許と「UV/抗菌インク」が集中しており、これまで確立している抗菌技術に関する特許が継続して出願されていることが分かる。中央左上には、抗菌石鹼や抗菌洗剤の溶剤系の抗菌技術が存在している。左下に大きく伸びているのが「抗ウイルス剤/シート」および「抗菌ペプチド」の領域であり、生体防御として抗菌ペプチドの研究が継続されていることが分かる。

 衣類に関しては、においの原因菌の繁殖を抑える用途が中心である。ウイルスに対抗するものは少ないが、銀系の抗菌剤を繊維に編み込むことで抗菌効果を生み出しているため、ウイルスに対する効果も一定レベルはあると考えられる(図2)。

図1 抗菌技術の全体像
図1 抗菌技術の全体像
(出所:VALUENEX)
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図2 銀系の抗菌技術の出願状況
図2 銀系の抗菌技術の出願状況
(出所:VALUENEX)
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