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 ウィズコロナのニューノーマル(新常態)時代を迎えたいま、私たちの生産と消費は大きく変わりつつある。いわゆる3密が常とされてきた公共交通、工場、オフィス、教育、店舗などリアル空間に人が集うことを前提としてきたビジネスは、その事業戦略の転換を余儀なくされている。そんな日常の中、大きな注目を集め、次の一手として期待が高まるのが非接触テクノロジーの活用である。

 新旧の非接触テクノロジーとその応用が開くこれからのビジネスについて、ドイツStatista(スタティスタ)が提供する世界の統計や市場調査データを基に、カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)の観点を交えて考察していく。最初はリテール(小売)業界を取り上げ、4回にわたって連載する。

 リテール分野で非接触というと、NFC(近距離無線通信)などのペイメント(決済)系テクノロジーがまず頭に浮かぶという方は多いだろう。モバイルの普及は消費者マインドに変化をもたらし、リアルとバーチャルの境界線を意味のないものとした。日常生活で欠かせない「買い物」にも大きな変化が訪れている。食料品のEC(電子商取引)はビフォーコロナから増加傾向だったが、コロナ禍を機に勢いを増している。アパレルでは閉店ラッシュが後を絶たないが、外出需要が減ったためだけではなく、構造的な問題も大きいだろう。

 リアル店舗の存在意義については長年いわれてきたことだが、いよいよ後戻りができなくなった。ニューノーマルのリテールには課題も多いが、その分、伸びしろは大きい。ビジネスチャンスが広がるこれからのリテール分野において、顧客体験に欠かせない非接触テクノロジーとはどのようなものだろうか。

消費行動に何が起きているか

 コロナ禍を経て消費行動に何が起きているか。その変化をデータで振り返ってみたい。

図1 コロナ禍による消費行動の変化
図1 コロナ禍による消費行動の変化
2020年6月8~14日の週における主要20業界、世界の1400のECサイト、70億セッションを4つの観点から分析した(出所:ContentSquare、資料提供:Statista)
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 図1は、2020年6月8~14日の週における主要20業界、世界の1400のECサイト、70億セッションを4つの観点から分析した結果である。グラフは、同年1月6日~2月16日との比較(青)と、前週との比較(黒)を表している。ステイホームによるトラフィックや決済数(トランザクション)、コンバージョン率(CVR)の増加は想像の範囲内だろう。

 一方、セッション当たりの滞在時間が減っていることは注目に値する。消費者は時間をかけずに目的買いをしたかったのだろう。そうした欲求が透けて見える。つまり、ECの運営側は、より分かりやすいナビゲーションは当然のこと、商品詳細の分かりやすさ、パーソナライズされた提案、スムーズな決済手段などでもてなし、せっかちになりつつある顧客をつなぎ留める必要があるということだ。

 同じ調査での、業界ごとのトラフィック比較を見てみよう(図2)。60%超えのネットスーパーが最も顕著だが、同時に、テック系商材(在宅勤務でヘッドセットやWebカメラなどが売れたと思われる)、巣ごもりスポーツ分野においても高い伸びが見られた。旅行業界へのダメージは見ての通り。こちらの数字にも明確に表れている。

図2 業界ごとのトラフィック比較
図2 業界ごとのトラフィック比較
(出所:ContentSquare、資料提供:Statista)
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