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 ウィズコロナのニューノーマル時代を迎えたいま、私たちの生産と消費には大きな変化が訪れている。様々な業界が戦略転換を迫られる中で、次の一手として期待が高まるのが非接触テクノロジーの活用である。その応用が拓くこれからのビジネスについて、ドイツStatista(スタティスタ)が提供する世界の統計や市場調査データを基に考察する。まずリテール(小売)業界を取り上げ、4回にわたって連載する。第2回の今回は、リテールが最も期待する自動化の非接触テクノロジーについて分析する(第1回の記事はこちら)。

 非接触テクノロジーの中で、リテール業界の課題を一気に解決する可能性を秘めた技術がある。それは、自動化を実現する非接触テクノロジーだ。レジの行列解消、商品検索、商品情報の提示、店舗在庫検索、ヘルプスタッフ探し――。自動化技術はこんなにも広範囲に恩恵をもたらすと、リテール業界は熱い視線を送る(図1)。

図1 自動化がリアル店舗にもたらす効果
図1 自動化がリアル店舗にもたらす効果
(出所:Capgemini、資料提供:Statista)
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 図2はビフォーコロナの2019年10月に調査した結果だが、自動化に対するリテール業界の高い意欲が見て取れる。この想定だと、今から約2年後の2022年10月には、同図に示す業務の5~7割は自動化されることになる。

図2 自動化技術を導入する店舗の比率
図2 自動化技術を導入する店舗の比率
(出所:Capgemini、資料提供:Statista)
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 自動化に疑問を持つ人はいるだろう。そうした人は、レジの行列を解消するには、入店を規制すれば良いと考えるかもしれない。

 しかし、それだけで本当に良いのか。重大な機会損失にならないか。例えば、その時間帯に最適な来店可能者数を考えたことはあるだろうか。入店を断った上顧客に対して、運良く混雑時に入店できた客の平均購入単価は2割以下だったりしないか。そうしたデータの裏付けは存在するのだろうか。

 レジ前の混雑は、スーパーや量販店ではよく見られる光景だ。しかし、EC(電子商取引)ではあり得ない光景である。ここにヒントがある。リアル店舗でも混雑の量と質を「可視化」することで、具体的な解決法が考案できるだろう。例えば、どんな支払い方法やポイントにも対応する万人に平等な“てんこ盛りセルフレジ”を設置する一方で、モバイル会計専用の優先レーンや、有料会員向けの自動決済ショッピングカートなどは導入できないだろうか。

 レジの自動化に抵抗を持つ人もいるかもしれない。ETCや自動改札の導入時にも賛否両論はあった。しかし、もう遠い昔のことに思える。最後に高速道路で現金を払ったのはいつのことだろう?

「可視化」で顧客の心をつかむ

 顧客の行動を可視化する意義は、レジ前の混雑解消だけにとどまらない。マーケティングの最強の武器になる。店舗で買い物する顧客を理解し、心をつかむ手掛かりとなるからだ。

 ECサイトでは、顧客の行動は基本的に可視化されている。セッション当たりの滞在時間やコンバージョン率(CVR)、顧客動線といった基本的な指標は当然分かる。だから、連載の第1回で紹介したような消費者の行動変化を押さえられるのだ。それだけでなく、商品ごとの閲覧状態、購入に至るまでの閲覧回数、顧客層ごとのプライシングの違いによる反応なども調べることができる。

 リアル店舗の分析にも、ECサイトと同様の分析手法やデータの粒度が求められるようになるだろう。その第一歩となるのが、顧客の入退店および店舗内での行動の把握である。顧客動線の分析や制御を行うために、行動把握が欠かせないからだ。