全1400文字
PR

 太陽光パネルの製造工程において現在中国が圧倒的な強さを誇っていることが、Bloomberg NEF(ブルームバーグNEF)が発表したリポート*1で明らかになった(*2。中国の再生可能エネルギー産業への投資は膨大で*3、世界市場でのシェアはそれを物語っている。太陽光発電のシェアを拡大しようとする国にとって、中国は避けて通れない存在だ。そして、この事実に大きなジレンマ*4を抱えているのが米国のバイデン大統領である。中国への厳しい対応を表明しているバイデン大統領は、米国のエネルギー政治を持続可能な未来へと導く絵を描こうとしている。一方の中国側は、パリ協定に戻った米国に対し、「米国は気候変動に対してより大きな責任を負う必要がある」という態度を取っている*5

図 太陽光パネル生産の各工程における国・地域別シェア。国・地域は本社所在地。多結晶Si(Polysilicon)は重量、太陽光セル(Solar cells)と太陽光モジュール(Solar modules)は電力のシェア(出所:Bloomberg NEF 、提供:Statista)
図 太陽光パネル生産の各工程における国・地域別シェア。国・地域は本社所在地。多結晶Si(Polysilicon)は重量、太陽光セル(Solar cells)と太陽光モジュール(Solar modules)は電力のシェア(出所:Bloomberg NEF 、提供:Statista)
[画像のクリックで拡大表示]

素材先進国、日本の進路は?

 このグラフが示すように、多結晶Si(Polysilicon)の生産から太陽光セル(Solar cells)、そして太陽光モジュール(Solar modules)の製造まで、すべての工程が中国の手中にある。これに対して、米国、カナダ、韓国は、太陽光パネルのすべての製造工程においてマイナーな存在にとどまっている。この他の国・地域はさらに存在感が薄い。ドイツは多結晶Siの生産では多少なりとも存在を示しているが、セルやモジュールはほとんど生産していない。台湾はセルとモジュールの小規模な生産地域にすぎない。

 また、中国の太陽光パネル製造の全工程における生産能力はこの20年間、ほぼ毎年、他の国・地域に比べてはるかに速いペースで増加し続けている。ブルームバーグNEFの推計によると、米国で組み立てられた太陽光パネルは、その価値の約60%が中国で生み出されているという。

 2020年を境に急速に進んでいる脱炭素化の流れは、もはや環境問題や持続可能性といった大義のみに頼ったものではない。グローバルな国家戦略という視点、そしてビジネスとしての魅力がそこに加わったことがポイントだ。そんな中、日本はどこに重点的に投資をすべきだろうか。高い期待が掛かるペロブスカイト型の太陽電池による光無線給電が実用化されれば、電気自動車(EV)やドローンなどが離れた場所から青色LEDで給電できるようになる。

 そうしたところに貢献する素材は日本が強みを持つ分野。今後、日本が脱炭素で巻き返しを図れるかどうかは、素材・ものづくり分野で、デジタル技術を生かしながら、いかにイノベーションを生み出せるかに掛かっている。