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 半導体不足のニュースに事欠かない日々が2021年になってから続いているのはご存じの通り。「Googleトレンド」で分析した検索ボリュームを見ても、自動車各社の相次ぐ減産の発表、世界最大の半導体ファウンドリーである台湾TSMC(台湾積体電路製造)の過去最高の四半期決算、そして同社の日本の研究開発センター開設がニュースになった2021年1月上旬のピークを過ぎても、それ以前の2倍程度の高水準が続いている。今や半導体の確保が国家戦略ともいわれるほど、半導体への関心が長期にわたって継続していることがうかがえる。

 半導体業界全体を見渡してみると、その設備投資額は2000年から2021年(予測)の間で、613億ドル(約6兆7400億円)から1250億ドル(約13兆7500億円)と倍増している。また、2018年から2020年にかけての設備投資の内訳を見ると、ファウンドリーへの投資の割合が21%から33.5%へと大幅に増加している。

生産停止に追い込まれた人気車種

 今回の記事では、半導体不足が目に見えて与えた影響のひとつとして、生産停止に追い込まれた米国の自動車の数々に注目する。消費者から見た米国の自動車市場の特異性も透けて見えるはずだ。

図 米国で半導体不足の影響により減産を余儀なくされた自動車の車種と、生産停止となった想定台数を示した(出所:Automotive News via Car and Driver、提供:Statista)
図 米国で半導体不足の影響により減産を余儀なくされた自動車の車種と、生産停止となった想定台数を示した(出所:Automotive News via Car and Driver、提供:Statista)
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 日本同様に半導体不足にさいなまれている北米では、何十万台もの自動車が生産停止に追い込まれている。2021年3月のルネサス エレクトロニクスの工場火災、大寒波が襲った米国テキサス州での油田凍結による半導体パッケージ向けプラスチックの減産など、様々な要因が半導体不足の原因となった。新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で多くの自動車メーカーが需要低迷を理由に注文をキャンセルしたのだが、市場が回復した今となっては、この決断を後悔していることだろう。

 自動車分野の業界紙「Automotive News」 は、北米の自動車メーカーが半導体不足の影響をどの程度受けているかを明らかにした(これは会員限定記事だが、この内容を紹介した記事を米国の自動車雑誌「Car and Driver」が2021年5月21日に公開している。こちらは2021年6月17日現在、だれでも読むことができる)。それによると、米Ford(フォード)は32万4616台の生産を中止し、米General Motors(ゼネラル・モーターズ、GM)は27万7966台の生産を中止した。最も影響を受けた車種はフォードのピックアップトラック「Fシリーズ」で、10万9710台の減産となった。また、米国市場で人気のある欧州Stellantis(ステランティス)の大型SUV(多目的スポーツ車)「Jeep Cherokee(ジープ・チェロキー)」は9万8584台、GMのクロスオーバーSUV「Chevrolet Equinox(シボレー・エクイノックス)」は8万1833台の減産が見込まれる。いずれも日本ではなじみのない車種だが、ピックアップトラックやSUVが大半を占めており、米国のライフスタイルを反映した興味深いリストと言える。

 ちなみに、重要な経営指標のひとつと言われる「在庫回転率」に注目すると、2020年4月に3.73回/月に上がったその数字は、2021年4月には1.03回/月にまで落ち込んでいる。新型コロナウイルス感染症拡大による供給不足を見越した先取り需要を取り合う状態から、「売るものがない」状態へと変わった現実を示す、シビアな数字と言えるだろう。 

 半導体不足はいつまで続くのだろうか。米Intel(インテル)のCEO(最高経営責任者)であるPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏は半導体不足の解消までに2~3年かかる可能性があると発言している。米Gartner(ガートナー)も半導体全体の供給難の解消は2022年第2四半期と予測する。しかし、車載半導体についてはそれよりも早く解消するという見方もある。例えば日本ガートナー(米Gartnerの日本法人)の山地正恒氏(ガートナー ジャパン リサーチ&アドバイザリ部門ディレクター、アナリスト)は、「車載半導体の供給難は2021年中に解消する」と、報道機関向けオンラインブリーフィングで語った(2021年5月11日に開催)。

 厳しい状況に置かれている自動車メーカーにとって、トンネルの先にある光を一刻も早く目にしたいところだ。

参考文献 Niall McCarthy, “The U.S. Car Models Most Impacted By The Microchip Shortage,” Statista. Thomas Alsop, “Global chip shortage 2021 - statistics & facts,” Statista. Google トレンド(「半導体」の分析結果) “Capital expenditure in the global semiconductor industry from 2000 to 2021(in billion U.S. dollars),” Statista. “Semiconductor industry capital spending from 2018 to 2020, by product type(in billion U.S. dollars),” Statista. Annie White, “Report Shows U.S. Automakers Bearing Brunt of Chip Shortage in North America,” Car and Driver. “Microchip Crisis takes big toll on Detroit 3,” Automotive News.(会員限定記事) “Monthly U.S. auto industry inventory-to-sales ratio between January 2009 and April 2021,” Statista. Sean Szymkowski, “Ford will pay you while waiting for a new car amid inventory crunch, report says,” ROAD SHOW by CNET. Thomas Alsop, “Intel - Statistics & Facts,” Statista. “Intel reiterates chip supply shortages could last several years,” Reuters.