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 公共空間や土木施設のデザインの質を向上させるためのデザインコンペの重要性が、土木界でも少しずつ認識され始めた。

 土木学会は2018年秋、国や自治体などの発注者を対象としてデザインコンペを導入するためのガイドラインを作成した。同年12月には、学会が自らデザインコンペ「22世紀の国づくり-ありたい姿と未来へのタスク」を主催。公開審査を実施して、受賞者を決めた。

 同コンペの審査員を務めた建築家の内藤廣氏に、コンペが果たす役割や審査員の責任、土木におけるデザインコンペの可能性について聞いた。


100年後を考え、仕事をすることの大切さ

土木学会が2018年、「22世紀の国づくり-ありたい姿と未来へのタスク」をテーマに初のデザインコンペを開催しました。内藤さんは審査員を務められましたが、その感想から聞かせてください。

内藤廣氏(写真:山田 愼二)
内藤廣氏(写真:山田 愼二)
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 東京大学名誉教授の高橋裕先生の預託で始まったプロジェクトと聞き、感銘を受けて一も二もなく審査員を引き受けました。全体の感想を言えば「100年先を見据えた国づくり」というテーマは、やはり難しかっただろうと思います。

 100年前、明治の土木の人たちは「日本が栄えるためには、これをやらねば」と、それこそ「百年の計」をもって仕事をしていました。しかし、太平洋戦争後は急いで国土を整備しなければならず、土木界は遠い先のことを考える能力が薄くなっていったのではないか――。そんなことを今回の審査で改めて思いました。

 そもそも100年前と今とでは、世の中の変化するスピードが全く違う。世界も日本の状況も指数関数的に変わってきています。その意味では100年前に100年後を思い描くのと、今から100年後を予測するのとでは、今の方がはるかに難易度は高いのです。技術の進化速度を考慮に入れれば、100年先どころか30年先も読めません。

 それでも高橋先生が考えられたように「明確には分からないが、どうしても大切だと思えるような、うっすらぼんやりした100年後」を、我々は日常の仕事の中に混ぜ込むようにしていかないといけない。今回のコンペをきっかけに、それを皆で考えようということです。試みとしては、とても素晴らしかったと思います。

インフラを造る土木の人は、建築の人に比べると長いスパンでものを見ている印象を受けますが。

 そういう面も確かにありますが、志を持ってやっている人はそれほど多くはいません。

 では、建築はどうか。建築は民業が中心で、時流に合わせなければ成り立っていかないのが現実です。しかし、建築の中にも長期でものを考えている人はいますし、都市計画の専門家として考える人もいます。

 結局は人次第。真に長い時間を考えているのは限られた人でしょう。