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 建築家の内藤廣氏へのインタビュー。後編では、コンペの審査員の役割と責任について聞いた。
(前編はこちら


コンペでは一般的に「今、面白いもの」が選ばれがちです。そこに長期的な視野を入れていくためには、どういうシステムのコンペにすればいいでしょうか。

内藤廣氏(写真:山田 愼二)
内藤廣氏(写真:山田 愼二)
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 審査員団が長いスパンで評価して選ぶことでしょう。主催する自治体の首長の考えも重要です。コンペの開催要領を出すときに、こういうことを重視するコンペなのだと首長や審査員長がメッセージを送っておけば、それを踏まえた応募が来るでしょう。

 首長や審査員長の役割は極めて大きくなるはずです。現状では、大事な役割を担わされている割には、審査員長をやってもあまり評価されないのですが(笑)。その点にも問題があると思っています。

内藤さんは、これまでに多くの建築コンペで審査員や審査員長を務めてこられました。

 審査員長の責任は重いです。これに対して、金銭的な報酬は非常に低い。だからプロジェクトが完成したとき、発注者から「よくぞこの案を選んでくれた」と言葉をかけられるのが審査員長にとって唯一の報酬です。

 「良いものができた」と真っ先に褒められるのも、「ひどいものだ」と責められるのも、本来は審査員長であるべきです。けれど実際は、竣工式にすら呼ばれないことも少なくありません。みんな忘れている(笑)。

 それでは使い捨てだし、選定する行政側のアリバイ作りに加担しただけの存在と言われても仕方ありません。だから、最近は審査員を可能な限り、引き受けないようにしています。応募する方がはるかに楽しい。

 英国のように審査員が名誉職になっていて、社会からリスペクトされる存在であれば、たとえ無償のボランティアでも皆、引き受けるでしょう。それが正しい方向だと思います。土木のコンペでも、「審査員になることはとても栄誉なことだ」という空気を醸成していくことです。

 僕の場合、建築のコンペで審査員長を引き受ける際は、審査後もできるだけアドバイザーとしての権限を残してもらうようにします。途中まで完成したところで建築家に図面を提示させて、「ここはコンペでのあなた方の提案や趣旨とは違うのではないか」と指摘できるようにしてもらう。

 当初案との相違が生まれる原因は、発注者側が無理を言っている場合もあれば、建築家がわがままを言っている場合もある。審査員がそれらを納める役割を担うこともあります。これはかなり力量が要るし、大変です。

なぜ、そこまでするのですか。

 例えば、実績のあるベテランの建築家に混ざって、あまり経験のない若い建築家がとてもいい案を応募してきたとします。元気がよく思い切った提案で、それがまちの刺激になり、長い時間の中でも彼の構築物が愛されていく。そういう話があっていいと思います。

 しかし、その案を選んだ後にフォローできないとなれば、審査員として責任を持てない。実績のある人だけを選ぶことになってしまいます。それではつまらない。