2020年が幕を開けた。デジタル技術の進化によって人々の生活や社会はどう変わるのか。企業はどんな対応をすべきか。商機はどこにあるのか。20の技術や市場・関心事を対象に、2020年の行方を大胆予測した。今回はPythonを取り上げる。
AI(人工知能)開発に必須のプログラミング言語として人気の「Python」。2020年は適用領域を広げる1年になりそうだ。具体的にはWebアプリケーション、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)サーバー、そして大規模開発でも業務アプリケーション開発言語としての採用例が増え、「本命」の一角を担う。
2019年までのPythonはAI開発やデータ分析、パソコン操作・インフラ設定の自動化といった領域によく使われた。様々な用途をこなす「実力」があるが、他の言語に比べてライブラリー(プログラムの部品)やツールが充実している領域から利用が増えてきた格好だ。2020年は業務アプリケーションの本丸ともいえるWebアプリケーションやAPIサーバーで活用する事例が増える。
Pythonに詳しいCMSコミュニケーションズの寺田学社長は「2019年ころからWebアプリケーションの開発を勉強するAIエンジニアが増えた。機械学習モデルを作るだけでなく、モデルで処理した結果を分かりやすく見せるところまで踏み込もうとしているからだ」と説明する。ここで使われる開発言語が、AIエンジニアにとって使い慣れたPythonである。
Pythonには「Django」や「Flask」といったオープンソースのWebアプリケーションフレームワークがある。これらを使えばPythonを常用しているAIエンジニアは新たな開発言語を勉強しなくともWebアプリケーションを開発できる。2020年以降、AIエンジニアが開発したWebアプリケーションが世の中に増えていくだろう。
APIサーバーについては、2016年リリースのPython 3.6に搭載された、非同期処理を記述するための関数「async」が一段と使いやすくなってきたため、活用が広がる。「ここに来てasyncの実装が成熟し動作が安定した。従来、非同期処理はNode.jsやGo言語の得意領域だったが、Pythonも選択肢に入るようになっている」(寺田社長)。Webアプリケーションと同様、AIエンジニアがAPIサーバーを開発するときのファーストチョイスになる可能性は高い。