2020年は「AIの民主化」が一段と進む。ユーザー企業はデータサイエンティストを抱えなくても、クラウド事業者が提供する「AIアプリケーション」を利用したり、「自動化されたAI開発技術」を使ったりするだけでAIのメリットを享受できるようになる。
背景にあるの2020年に起こる2つの変化だ。1つはAI(人工知能)を巡る大手クラウド事業者の競争が、ハードウエアなどの「プラットフォーム」からアプリケーションへと移る変化だ。AI技術を使って何ができるかをユーザー企業が考える時代は終わり、課題解決に向けて誰でも使える「ソリューション」を作り込んで提供する事業者がAI市場で優位に立つ。
もう1つがAIの開発技術の変化だ。人間が「教師データ」を与えなくても、AI自身が人間に頼らずに次々と学んで賢くなる機械学習手法が普及する。
顧客対応をAIが自動化
「顧客のビジネス課題を機械学習でどう解決するかが、我々にとって最も重要になった。ビジネスの成果(アウトカム)に直結する業種特化型のソリューションに力を入れていく」。競争の場をAIプラットフォームからAIアプリケーションに変える意気込みを、米グーグルでクラウドAI事業を統括するラジェン・シェス バイス・プレジデント(VP)はこう話す。
グーグルはこれまでAIプラットフォームの提供に力を入れてきた。具体的には学習や推論に使うハード環境や深層学習フレームワーク、画像認識や音声認識などに関する学習済みの機械学習モデルなどである。これらのAI機能を組み込んだ業務アプリケーションはユーザー企業が自ら開発する必要があった。
だがグーグルは今後、AIを活用したアプリケーションまで開発していく。「70%以上のユーザー企業はAIの精度を気にしていなかった。ユーザー企業が最も頭を悩ませていたのは機械学習をどう活用するかについてだった」(シェスVP)という気付きがあったからだ。
グーグルはAIソリューションの第1弾として「コンタクトセンターAI」を2019年11月に提供開始した。同ソリューションを導入すると顧客からの問い合わせにはまず音声エージェントやチャットボットが応対する。