2020年が幕を開けた。デジタル技術の進化によって人々の生活や社会はどう変わるのか。企業はどんな対応をすべきか。商機はどこにあるのか。20の技術や市場・関心事を対象に、2020年の行方を大胆予測した。今回はSIerを取り上げる。
SIerが今の主力ビジネスで生き残れるのはユーザー企業の基幹システム刷新需要が残る2025年までだ。SIerの2020年度業績は2025年以降の「存続度合い」を判定する最初の材料となる。
SIerは過去30年、主に基幹システムの領域で要件定義からテストまでを一貫して請け負うSI(システムインテグレーション)を主力ビジネスにしてきた。IT業界の多重下請け構造を使って技術者を大量動員し、大規模案件をこなしてきた。請け負った保守運用でも下請け技術者を客先に常駐させ、改修要望にきめ細かく対応してきた。
こうして築いてきたユーザー企業との強固な関係は今、風前のともしびだ。多くのユーザー企業がDX(デジタルトラスフォーメーション)に乗り出し、IT投資を基幹系からビジネスそのもののデジタル化に移しつつあるからだ。IT部門とは別にDX推進組織を立ち上げ、AI(人工知能)などを活用したサービスの開発に取り組む企業も増えている。
多重下請けに安住してデジタル技術やコンサルティング能力の研さんを怠ってきたSIerはユーザー企業のニーズを満たせなくなってきた。ユーザー企業が求めるのは、ビジネスのデジタル化への知見であり、クラウドを活用したアジャイル開発に対応できる、プログラムを書ける技術者である。
一方、SIerは要望通りのシステムをウオーターフォール型で開発するのが基本。プログラミングは下請けに任せ、自らはプロジェクトマネジメントに担ってきた。
要は、ユーザー企業のニーズとの間でミスマッチが生じているのだ。そこでSIer各社はSIerなりのDXに取り組み始めた。