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2020年が幕を開けた。デジタル技術の進化によって人々の生活や社会はどう変わるのか。企業はどんな対応をすべきか。商機はどこにあるのか。20の技術や市場・関心事を対象に、2020年の行方を大胆予測した。今回は携帯市場を取り上げる。

 新規参入の楽天モバイルがどのような料金プランを打ち出すかが2020年の最大の注目点だ。楽天の三木谷浩史会長兼社長は「他社がなかなかまねできない料金体系になる」と宣言しており、NTTドコモやKDDI(au)、ソフトバンクの既存大手はその内容次第で対抗値下げを余儀なくされるからだ。

表 携帯4社の保有周波数と基地局数(5Gを除く)
楽天モバイルは保有周波数と基地局数が圧倒的に少ない(出所:総務省の公表資料を基に日経コンピュータ作成)
表 携帯4社の保有周波数と基地局数(5Gを除く)
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 三木谷会長は「政府が思っている以上の値下げ効果が出るのではないか」と自信を見せるが、期待外れに終わる可能性もある。楽天モバイルのネックはインフラの弱さだ。電波が回り込んで届きやすい周波数帯「プラチナバンド」を保有しないばかりか、保有周波数が既存大手と比べて大幅に少ない。基地局数も既存大手の数十分の1程度。通信速度や品質は見劣りする。

 同社は当面、KDDIとのローミング(相互乗り入れ)で全国をカバーする計画だ。料金を安くしすぎると、通信料収入よりKDDIに払うローミング費用が高くなる「逆ざや」に陥る。このため、料金プラン単体では思い切った安値を打ち出しにくく、楽天経済圏と絡めた「お得感の演出」が濃厚だ。

 そうなると楽天ほどの経済圏を持たない既存大手は確かに「まねできない」。ただ通信速度や品質で優位性を持つ既存大手が「顧客流出などの影響は少ない」と判断すれば値下げ競争は不発に終わる可能性が高い。