全6099文字
PR

 第2回で紹介したようなバイオマス由来の生分解性プラスチックを活用した資源循環はサーキュラーエコノミー(CE)実現の1つの有力な方策となる。石油由来プラスチックの使用量を減らし、焼却や埋め立てといった廃棄物処理も不要になる。

 しかしCEの選択肢はこれだけではない。より短時間に、または手間をかけずに(エネルギーを消費せずに)循環させるルートもある。素材再生(いわゆるリサイクル)と再販売/再利用(リユース)である。

 こうしたCEのルートにおいても、ものづくり企業が活躍できる場面は多い(図1)。素材再生においては、低品質の廃プラでもバージン材と同等の品質に再生できる技術や、再生工程への投入に最適な状態に素材を分離する技術などが必要だ。また、CEを円滑に回すために製品を効率的に回収仕組みや、循環を前提とした設計・製造についても、ものづくり企業は活躍できる。

図1 サーキュラーエコノミーの実現に向けたものづくり企業の力
図1 サーキュラーエコノミーの実現に向けたものづくり企業の力
素材の再生や再利用、再販売という循環を実現するためには、それを前提とした設計・製造技術などが総合的に必要になる。1社だけの取り組みではなく、複数のものづくり企業による連携が不可欠だ。
[画像のクリックで拡大表示]

牛乳配達のように一般消費財を提供

 2019年12月6日、東京ビッグサイトで開催された展示会「エコプロ2019」の特設ステージに、東京都知事の小池百合子氏とともに登壇した米国テラサイクルCEOのトム・ザッキー氏(図2)。同社は食品や洗剤、化粧品などの一般消費財の容器を再利用するプラットフォーム「Loop」を立ち上げた企業だ。

図2 「エコプロ2019」で講演するテラサイクルCEOのトム・ザッキー氏
図2 「エコプロ2019」で講演するテラサイクルCEOのトム・ザッキー氏
テラサイクルは、サーキュラーエコノミーを実現するプラットフォームとして消費財や食料などの容器を再利用する事業「Loop」を立ち上げた。米国ニューヨークとフランス・パリで2019年5月から試験運用を開始し、日本でも2020年秋に同事業を立ち上げる。(写真:日経ものづくり)
[画像のクリックで拡大表示]

 テラサイクルは2019年春に米国ニューヨークとフランス・パリで約5000ユーザーを対象にLoopの試験運用を開始。日本でも2020年の秋に東京で試験運用を開始する計画だ。

 Loopは消費財を扱うさまざまなメーカーと連携し、消費者との間をつなぐ(図3)。消費者はLoopのWebサイトで製品を注文。テラサイクルは専用の通い箱(これも再利用する)で注文した製品を自宅に配送する。利用者は、届けられた製品を使い終わったら、空の容器を洗浄せずにそのまま通い箱に入れる。

図3 「Loop」の仕組み
図3 「Loop」の仕組み
消費者はWebサイトなどで商品を選んでテラサイクルに注文。テラサイクルは専用の通い箱に入れて自宅に配達する。使用済み製品の容器は同じ通い箱で回収し、テラサイクルで洗浄した上でメーカーに返却。メーカーで内容物を再充填した上でテラサイクルに納品する。
[画像のクリックで拡大表示]

 消費者の自宅から回収した容器は、テラサイクルが各製品に合わせた方法で洗浄してからメーカーに戻す。メーカーは返却された容器に内容物を再充填し、テラサイクルに納品。テラサイクルが注文に応じて消費者へと届けるという仕組みだ。

 このとき、消費者は容器のデポジットは払うものの、返却すればデポジットは戻ってくる。つまり、容器の所有権はメーカー側にあり、消費者は内容物だけを購入する。Loopは試験運用の段階のため正式な価格は決まっていないが、基本的に従来の容器ごと販売する場合よりも価格は高くしない方針だという。

 Loopの取り組みで興味深いのは、配送と回収を集中的に実施するという役割だけでなく、容器の洗浄も請け負う点だ。そのため、容器の設計についてはテラサイクルからメーカーに洗浄のしやすさなどをアドバイスするという。

 再利用を前提とした場合、耐久性の向上も必要になる。日本でLoopに賛同した食品メーカーや生活用品メーカーは2020年に始める試験運用に備えて容器のサンプルをエコプロ2019で展示していたが、金属を使った容器が多かった。

 加えて、容器の製造コストをある程度高められる点も魅力だ。内容物の鮮度保持や開閉のしやすさ、持ちやすさといった使い勝手を、従来の容器ではコスト面で実現できなかったレベルに高めることも可能になる。

この記事は有料会員限定です

日経クロステック有料会員になると…

専門雑誌8誌の記事が読み放題
注目テーマのデジタルムックが読める
雑誌PDFを月100pダウンロード

日経電子版セット今なら2カ月無料