多くの企業にとって、年度末を迎える3月は入社や人事異動に伴うオフィスのレイアウト変更が発生しがちだ。その際に、ネットワーク機器の設置場所を変更したり、LANケーブルをつなぎ直したりする作業が発生することもある。
こうしたレイアウト変更をネットワークに詳しくない社員が実施すると、LANスイッチからケーブルを抜いてしまったり、誤ってLANケーブルをつないでしまったりしてトラブルに発展することがある。
テクノ菱和のシステム室に勤務する網倉 麻古さんが遭遇したトラブルもレイアウト変更中に発生した。網倉さんはどのようにトラブルから脱出したのか。その全容を見ていこう。
ファイルサーバーにつながらない
トラブルが発生したのは東京都豊島区にあるテクノ菱和の本社だ。テクノ菱和は主に空調設備の設計や施工、メンテナンスなどを手掛ける。全国に約60の拠点があり、それらをNTTコミュニケーションズのVPNサービスである「Arcstar Universal One」を使ってつないでいる。
本社ではルーターとコアスイッチを接続し、そこへ各階にあるフロアスイッチをつなぎ込んでいる。このフロアスイッチに、社員の勤務エリアにある島ハブがつながっている。コアスイッチはレイヤー3(L3)スイッチ、島ハブを含むそれ以外のスイッチはレイヤー2(L2)スイッチだ。
テクノ菱和でネットワークや社員IDの管理、セキュリティー対策などを担当しているのが、網倉さんが勤務するシステム室である。システム室は東京都新宿区にあり、各拠点のネットワークをリモートで管理している。
2019年9月5日午前9時ごろ、本社でネットワークの管理を担当している社員(以下、本社の担当者)から「ファイルサーバーにアクセスできない」という電話が網倉さんにかかってきた。このファイルサーバーは本社6階のフロアに設置されており、他の拠点から利用できる。
連絡を受けた網倉さんは、まずトラブルの影響範囲を把握することにした。全国の拠点をつなぐネットワークにトラブルが発生していると業務に支障が生じかねない。その場合は、早急に社内に通知する必要がある。
網倉さんはまず、各拠点を接続するVPNサービスのメンテナンスが原因かもしれないと考えた。サービス側が緊急メンテナンスを実施しているのであれば、本社のファイルサーバーにアクセスできないのも納得できる。
そこでNTTコミュニケーションズのWebサイトなどでメンテナンス情報を確認した。しかし該当するようなメンテナンス情報はなかった。
この確認作業中、本社からインターネットに接続できないという問い合わせが数件寄せられた。また神奈川県横浜市にある拠点から「本社のファイルサーバーにアクセスできない」と電話で連絡があった。ただし横浜市の拠点では普段通りインターネットに接続でき、本社のファイルサーバー以外へのアクセスは正常だという。この時点で「トラブルはネットワーク全体ではなく、本社で発生していると確信しました」(網倉さん)。