2.4GHz帯規格への接続を停止
アンケートで概要をつかんだ木村さんは、本社と拠点aのネットワークにアクティブセンサーを設置した。パケットを取得し、通信の遅延状況やDHCPなどのサービスの稼働状況といった詳しい情報を集めるためだ。アクティブセンサーは無線LANと有線LANの両方に接続。両者の違いを確認できるようにし、問題を切り分けやすくした。
アクティブセンサーで情報を集めるのと併せ、木村さんはWLCから無線LAN環境全体の様子を確認した。WLCでは周波数帯ごとの接続端末数などを確認できる。
2.4GHz帯と5GHz帯のそれぞれに接続する端末数を確認したところ、木村さんは驚いた。2.4GHz帯で接続している端末が極端に多かったからだ。A社の当時の環境では、5GHz帯では最大通信速度が6.9Gビット/秒の規格であるIEEE 802.11acを利用できた。一方、2.4GHz帯で使えるのは最大300Mビット/秒のIEEE 802.11nまでだった。
木村さんは、多くの端末が2.4GHz帯の低速な無線LAN規格で接続しているために「遅い」という問題が発生していると考えた。そこで端末が2.4GHz帯に接続しないように、WLCから無線LANアクセスポイント(AP)の設定を変更した。
その結果、すべての端末が5GHz帯につながった。すると本社と拠点aのいずれでも、「無線LANが遅い」という苦情は寄せられなくなった。
DHCPの通信に異常
続いて木村さんは残る問題、拠点aの「つながりにくい」の原因究明に取り組んだ。アクティブセンサーのログを確認すると、手掛かりがあった。DHCP関連の通信の応答遅延やタイムアウトが度々発生していたのだ。
これは、端末とDHCPサーバーの通信が正常にできていないことを表している。無線LAN経由だけでなく、有線LAN経由で通信したときも発生していた。木村さんは端末とDHCPサーバーの間で何かが起こっていると当たりを付けた。
木村さんは端末とDHCPサーバーを結ぶネットワークの構成を確認した。端末は、無線LANであればAPに、有線LANであればそのままPoEスイッチにつながる。そこからは拠点aのネットワークを束ねるL3スイッチ(コアスイッチ)へとつながる。
コアスイッチからはサーバー側のスイッチを経由し、DHCPサーバーへ到達する。端末のあるオフィスセグメントとDHCPサーバーのあるサーバーセグメントは、コアスイッチを境に分かれている。
木村さんはDHCPサーバーを収容するスイッチにミラーポートを設定して調査用の端末を接続。オフィスセグメント側の端末に相当するアクティブセンサーとDHCPサーバー間の通信を確認した。すると端末からのDHCP Requestなどが、DHCPサーバーへ届いていないと分かった。
通信経路にはセグメント間のブロードキャスト通信を、DHCPリレーエージェント機能で中継するコアスイッチがある。「コアスイッチに狙いを絞ってより細かく調べることにしました」(木村さん)。