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2022年1月下旬、生鮮宅配サービス「Oisix」で大規模な物流トラブルが発生した。注文キャンセルや遅配、欠品などが生じ、約11万人の顧客に影響が及んだ。生産性向上を狙った新物流センターへの大規模移転がきっかけだった。新システムは平時の生産性が高い半面、非常時は柔軟性に欠く弱い面が出た。今もなお完全復旧には至らず、オイシックス・ラ・大地は9月末までに再起を目指す。

 「届いたのは段ボール箱2個。1つは豆腐が2つ、もう1つは空箱だった」「注文したものが全部欠品という連絡が商品到着予定日の前日午後11時に来た」「豚肉が届かず、夕飯に困る」――。

 2022年1月下旬、TwitterなどのSNS(交流サイト)上では、オイシックス・ラ・大地が提供する生鮮宅配サービス「Oisix」の顧客から、こうした悲鳴の声が次々と書き込まれた。同社では1月16~17日に実施した物流センターの大規模移転に伴い、配送遅延や欠品などのトラブルが1月18日から発生していた。1月25日以降、配送遅延は解消したが、トラブル発生から約2週間は電話やメールでの問い合わせが殺到し、対応に追われた。今もなお完全復旧には至っておらず、欠品を防ぐために発注量を増やしたり、販売アイテム数を制限したりしている状況が続く。

 1月18~24日の期間中、欠品などを理由に同社が配送をキャンセルした顧客は約8万人、配送が遅延した顧客は約1万人、1品以上の欠品が生じた顧客は約2万人。Oisix会員の約3分の1に当たる合計約11万人に影響が及んだ。トラブルに関する問い合わせ件数は約7000件に達した。

欠品した状態で商品が届いた様子
欠品した状態で商品が届いた様子
(撮影:日経クロステック)
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 一連のトラブルで2022年3月期連結業績には売上高で15億円、利益ベースで15億~20億円のマイナス影響が出る見通しだ。高島宏平社長は2月10日の決算説明会で「配送トラブルで多くのお客様や投資家にご迷惑をおかけした」と陳謝した。物流センターの大規模移転で一体、何が起こったのか。

需要拡大で移転を2年前倒し

 同社の主力ブランドであるOisixは、新型コロナウイルス禍の巣ごもり消費拡大を受け、急成長を遂げていた。2021年12月末の会員数は約35万人。2020年3月末から10万人以上増えた。同社は神奈川県海老名市に冷蔵品・常温品の物流センターを置いていたが、出荷能力が追い付かなくなり周辺にサテライト拠点を増設して対応していた。ただ生産者から届いた食品を物流センターで振り分けてから顧客宅に配送するため、非効率が生じていた。

 そこで延べ床面積が約5倍の新物流センターを同じ海老名市内に建設し、段階的に移転する計画を進めていた。新物流システムの活用で作業を効率化し、出荷能力を従来の約2倍に高める想定だった。当初は2024年ごろの移転を予定していたが、コロナ禍における宅配需要の拡大に対応するため、約2年の前倒しを決めた。新物流センターの竣工は2021年8月。まずは1割程度の顧客の出荷分を対象に2021年10月から移管を始めた。その後、段階的に移管対象を広げ、全出荷分を新物流センターに切り替える作業を実施したのが2022年1月16~17日になる。その翌日、トラブルを引き起こした。

新物流システムで発生したトラブルの概要。注文キャンセルや遅配、欠品など約11万人に影響が出た
新物流システムで発生したトラブルの概要。注文キャンセルや遅配、欠品など約11万人に影響が出た
(出所:オイシックス・ラ・大地の資料を基に日経コンピュータ作成)
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