2021年3月23日、Androidスマートフォンで多数のアプリが強制終了するトラブルが発生した。個々のアプリに不具合があったわけではない。バグを含んだモジュール「WebView」をグーグルが誤って配信したのが原因だ。WebViewは多くのアプリで利用され、結果的に「単一障害点」となっていた。障害は12時間にわたって続き、同社の対応にも課題を残した。
「スマートフォンの電子マネーにチャージしてから昼ご飯を買おうと思っていたのに、アプリが開けず途方に暮れている」「メールアプリが使えないので携帯ショップに行ったら、同じような不具合の人がたくさん来ていた」――。
2021年3月23日、Twitter上に悲痛な声が広がった。投稿者たちが訴えたのは、米グーグルのOS「Android」を搭載したスマホにおいて多数のアプリが正常に起動できなくなるトラブルだ。アプリの起動直後に強制終了したり、操作の途中でクラッシュしたりする現象に見舞われた。
原因は、Androidに標準で付属するソフトウエアモジュール「WebView」の不具合だった。グーグルが誤って「実験および設定技術のバグ」(同社)を含んだバージョンを配信してしまった。さらにトラブルの原因や対策について当のグーグルによる情報開示が後手に回り、事態は一段と混迷を深めることになった。
ライフラインの復旧に半日
トラブルは3月23日未明に発生した。NTTドコモによれば、午前5時ごろから同社が提供するAndroidスマホの一部で、決済アプリ「d払い」やメールアプリ「ドコモメール」などを利用しづらい事象が生じた。KDDI(au)やソフトバンクなどの利用者も同様の被害を受けた。
被害はこれだけではない。対話アプリの「LINE」やフリマアプリの「メルカリ」、家計簿アプリの「マネーフォワード ME」、さらにはネットバンキングなど様々なアプリが正常に起動できなくなった。
一方で、これらのアプリを通常通り使える人もいた。そのことがかえって利用者の混乱を招いた。SNS(交流サイト)上では「起動できないアプリを削除して再インストールすれば直るかもしれない」「データが消えて元に戻せなくなるのでやめるべきだ」などと情報が錯綜(さくそう)した。Twitterで「アップデート」「アンインストール」といったキーワードがトレンド入りするなど、社会的な関心を集めた。多くのアプリ提供事業者は利用者への状況説明や注意喚起に追われた。
事態が収束に向かったのは同日夕刻のことだ。グーグルがアプリストアの「Google Play」を通じ、トラブルを解消するためのモジュールを配信。これをスマホに適用すれば、アプリを正常に起動できるようになるとした。
今やスマホのアプリは「ライフライン」と言える存在になった。それが起動できなくなるという深刻なトラブルがおよそ12時間にわたって続いた。グーグルの日本法人は同日午後4時57分、Twitterで「Androidアプリが一部のユーザーで強制終了する問題を修正した。ご迷惑をおかけした皆様におわび申し上げる」と謝罪した。