全2907文字
PR

雇用調整助成金の受付システムが2度の停止に見舞われた。どちらも他人の情報を閲覧できてしまう不具合が判明。原因究明と再発防止を急ぐが、再開のめどは立っていない。関係者によると、契約から稼働まで20日もない状況だった。稼働を急ぐあまり、短い納期がミスを誘発した可能性がある。

 「今回オンライン受付システムを開始した早々に、こうした事態を招いたことに心からおわびを申し上げたいと思います」――。厚生労働省の加藤勝信大臣は2020年5月22日の閣議後記者会見でこう陳謝した。

 そのシステムとは、5月20日午前10時ごろに運用を始めた「雇用調整助成金等オンライン受付システム」のことだ。稼働開始後すぐに不具合が判明し、わずか1時間ほどで停止に追い込まれた。雇用調整助成金を申請しようとした人が、他人の氏名やメールアドレス、電話番号を閲覧できてしまうという不具合だった。

 雇用調整助成金は、企業が従業員に休業手当などを支払う場合にその一部を国が助成するものだ。これまでは全国のハローワークや労働局で紙による申請が必要だった。しかし新型コロナウイルス感染症の影響で申請の大幅な増加が見込まれることから、手続きを簡便にし審査を迅速にするためオンライン申請の仕組みを新たに整えた経緯がある。

 もっとも、システム停止までにアカウントの登録ができたのは約2000人、実際の申請ができたのは60人ほどだった。国のもくろみは初日から崩れてしまった。

厚生労働省の「雇用調整助成金等オンライン受付システム」で発生したトラブルの経緯
厚生労働省の「雇用調整助成金等オンライン受付システム」で発生したトラブルの経緯
[画像のクリックで拡大表示]

複数人に同一のIDを発行

 原因について加藤大臣は、「初回の登録時に複数の者が同時刻に登録すると同一のIDが付与され、その結果として不具合が生じた」と5月22日の閣議後記者会見で説明した。

 オンライン受付システムでは、アカウント登録時に申請者が設定したメールアドレスをログインIDとしていた。メールアドレスは申請者ごとに基本的に異なるため、ここでいう「同一のID」とは申請者のメールアドレスにひも付けたシステムの内部的なIDを指す。1つのメールアドレスに対して1つのユニークなIDを割り振るのが通常の処理になる。

 ところがプログラムのバグにより、複数の申請者が同じタイミングで登録した場合に同一のIDが存在する状況が生まれてしまった。他人の氏名やメールアドレス、電話番号が閲覧できてしまったという現象を踏まえると、同一のIDを持った他人の情報が画面上に表示されていたと推測される。

 システム開発を請け負ったのは富士通。富士通の再委託先としてペガジャパンも入っていた。厚労省を含めた関係者は詳細を明らかにしていないが、IDの採番方法に問題があり、さらにIDの重複をチェックする機能もなかったことが原因とみられる。