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福井県の企業支援サイト「ふくいナビ」が2020年11月1日に“消失”した。サーバー運用を受託した事業者が、クラウドの更新手続きを怠ったのが原因だ。情報漏洩を警戒し、契約終了後にクラウドの全データを消去する契約だった。オンプレミスにデータがバックアップされていたため最悪の事態は免れた。ただしオンプレミスにバックアップがあることを、ユーザー側は知らなかった。

 「クラウドサーバー上のデータが完全に消失していることが判明しました」─。福井県の公益財団法人ふくい産業支援センターは2020年11月5日、県内企業・団体向けポータルサイト「ふくいナビ」が、2020年11月1日から利用できなくなったと発表した。

 ふくいナビを運営するクラウド上の仮想サーバーを管理していたNECキャピタルソリューションが、クラウド事業者との間でサーバーの契約更新手続きを怠ったために、ふくいナビのクラウド上のバックアップを含む全データが消失し「復旧が不可能な状態」(ふくい産業支援センター)となった。

 ふくいナビは、福井県内にある企業・団体の情報発信や相互交流、事業振興の支援を目的として、ふくい産業支援センターが1999年から運営しているポータルサイトである。セミナー講演や研修会、商談会などイベントの告知、事業助成金の公募、県内の公共機関や企業へのアクセス情報など、提供している情報は多岐にわたる。

 加えて情報発信や交流のためのメーリングリストやメールマガジンも、このサイトから申し込んで購読する仕組みを取っていた。2020年10月31日まで利用されていた287のメーリングリストと80件のメールマガジンの購読者リストやメールアドレスなども全て、ふくいナビのクラウドサーバー上に保存していた。

NECのクラウドを利用

 20年以上に渡り福井県の中小企業や商店など地場産業の情報発信を支えてきたポータルサイトが、突如として消滅するという今回のトラブル。原因は、人為的な手続きミスだった。

 ふくいナビのシステムに利用していたクラウドサーバーは、NECキャピタルソリューションがNECから仕入れ、ふくい産業支援センターに貸し出していた。

 ふくい産業支援センターは契約期間が終了する2020年10月31日を前に、NECキャピタルソリューションとの間で「クラウドサーバーの賃貸借契約」の更新手続きを済ませていたという。

 ところがその後、NECキャピタルソリューション側の事務手続きにミスがあり、実際にはクラウドサーバーの利用を継続できなくなっていた。そのため10月31日をもって、ふくいナビの運営用サーバーはNECのクラウド上から削除された。

 なぜこのようなミスが発生したのか。ふくい産業支援センターとNECキャピタルソリューションへの取材を基に経緯を振り返ろう。

2015年にクラウド移行

 ふくい産業支援センターはもともとオンプレミス環境で「ふくいナビ」のシステムを構築し、保守事業者にシステムのメンテナンスを委託してきた。NECのクラウド環境に移行したのは2015年のこと。この際、NECキャピタルソリューションを通じて2020年10月31日まで5カ年のクラウド利用契約を締結した。

 ふくい産業支援センターはふくいナビのシステムをオンプレミスからクラウドに移し、アプリケーションなどのメンテナンスは従来の保守事業者に再び委託した。

 契約期間の終了日が差し迫った10月13日、同センターはクラウドサーバーを1年間延長して利用するため、NECキャピタルソリューションとの契約を更新した。これでふくいナビのクラウド上のシステムは、11月1日以降も稼働を続けるはずだった。