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2021年11月、大分県で河川氾濫の誤情報を配信するトラブルが発生した。延べ約5500件のアドレスに対し、計6通のメールが3回にわたって誤って送られた。誤配信の原因とみられるのは、サーバーの冷却ファン故障による熱暴走。ただ12月22日時点で詳細は解明しておらず、サーバーも交換できていない。大分県には改めて危機管理の徹底と、システム運用の見直しが求められる。

 「本日、06時10分、ご登録の河川が、避難判断水位を超えました。近隣にお住まいの方は、今後の市町村の発表する情報に注意してください。<対象河川(橋)>末広川(黒丸橋)、臼杵市 末広」――。

 2021年11月8日、大分県でこうした避難情報を知らせるメールが3回にわたって県民などに送信された。河川の水位が上がり、避難の必要性が高まっていることを知らせるものだが、実際には注意を喚起するほどの状況ではなかった。誤った情報を送信したことについて、大分県河川課の四嶋信一防災調整監は、「県民のみなさまに迷惑をかけて申し訳ない」と陳謝した。原因はシステムの不具合によるものとみられるが、1カ月以上たった12月22日時点でもまだ復旧していないという異例の事態になっている。

大分県庁
大分県庁
撮影:日経クロステック
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事態把握に手間取り3回の誤配信

 誤ったメールの配信は11月8日の午前6時10分に起こった。大分県の河川などには81の水位計と89の雨量計が設置してある。水位は10分間隔で測定しており、結果は行政用の無線を介して「大分県河川砂防情報システム」に転送される。同システムは11台のサーバーで構成し、水位計へのデータ送信指示、測定結果の受信とそれを元にした演算、他システムへのデータの転送などの処理を担う。水位が一定の基準を超えると、そのデータが「大分県防災情報システム」へ転送され、災害情報を伝える「県民安全・安心メール」を作成。大分県から県民に向けて送信される仕組みになっている。

表 大分県の「河川砂防情報システム」で誤情報配信が起こった経緯
サーバーのハード故障により誤った情報が発信された
表 大分県の「河川砂防情報システム」で誤情報配信が起こった経緯
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 ところが冒頭の通り、実際には注意を喚起しなければならないほどの水位とはなっておらず、誤った情報を送信してしまった。送信件数は県民安全・安心メールに登録された携帯電話メールなど延べ約5500件。同システムと連動しているSNS(交流サイト)のFacebookやTwitterにも誤った情報が掲載された。

 国が定めた水位の危険度の基準によると、今回発信した避難判断水位は「危険度3」の位置づけになる。氾濫発生を示す最も高い基準が「危険度5」となっており、危険度3は決して油断できない状況にあることを意味する。同時に別の河川や橋でも危険度2に相当する氾濫注意水位である旨を知らせる2通のメールが送信されていた。

 このメールは大分県河川課の職員も受け取っていた。11月8日は朝から雨が降っていたものの、避難の判断を迫るほどの雨脚ではなかった。違和感を覚えた大分県河川課の職員は水位計とは別にある河川の監視カメラの画像を確認したが、やはり水位は上がっていなかった。たまたま満潮のタイミングで水位が上がっていた可能性も疑って調べたが、同時間帯は満潮時刻でもなかった。

 大分県河川課によると、まれに誤ったデータを測定してしまうこともあり得るという。水位計は川の水面に向けて発射した電波が戻ってくる時間を測定する仕組みのため、何か物が遮ったり、一時的に水位が上がったりしたときにそれを読み取ってしまうことがあるからだ。過去に重大なシステム障害が起こったこともないため、しばらく様子を見ることにした。

 しかし、その後も誤配信は続いた。午前8時30分には2件のメールが配信され、対象河川(橋)は1回目と同様、「末広川(黒丸橋)臼杵市 末広」などだった。やはり監視カメラで画像を確認したが、避難判断が必要な水位ではなかった。ここでシステムの不具合を察知した大分県河川課は、午前9時5分に情報が誤りだった旨を知らせる情報を発信した。並行して、同システムの構築と保守運用を手掛ける企業を通じて原因の調査に入った。

 調査の最中の午前9時50分には再び1件のメールが誤って配信された。不具合を認識していながらメールが送信された理由は、何が起こっているかの調査を優先し、メールを止める作業を後回しにしていたためである。大分県河川課は午前10時15分に再度誤りだった旨を知らせる情報を出した。