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シナモンはAI技術を活用した企業向け製品で成長するベンチャーだ。CEOの平野未来にとっては同社が2社目の起業になる。苦難の連続を乗り越えられたのは「起業家でありたい」との思いがあるからだ。

(写真:陶山 勉)
(写真:陶山 勉)
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 「シナモン」。カフェのようなかわいい社名だが、AI(人工知能)の開発会社だ。主力事業はAI技術を応用して手書き文字を高精度に認識するAIOCR(光学的文字認識)エンジン。会議の議事録作成やコールセンターの入力作業などの用途で音声をリアルタイムで文字に変換する音声認識AI技術も持つ。AIのアルゴリズムを作る約100人のエンジニアを抱え、そのうち9割以上はベトナム人だ。

 「創業当時はアジア向けのスマートフォンアプリを手がけていた。主力となるサービスを育てたら、その名称を社名にしようと思っていたので、シナモンという社名は適当に付けた」。創業者であり、CEO(最高経営責任者)の平野未来は笑う。

 平野にとってシナモンは2社目の起業となる。「起業家になりたい」と思ったのは大学4年生の時だ。2006年、大学院1年生で1社目のネイキッドテクノロジーを創業した。

 当時はミクシィなどSNSが普及し始めた頃だった。平野は大学院でAIを研究していた。SNSにAIを使ったレコメンデーション機能を導入しようと考えたが、興味を示す企業はなかった。やむなく携帯電話向けのミドルウエア開発に事業を転換した。そして2011年、ネイキッドをミクシィに売却した。自身もミクシィに入社し新規事業担当に就いた。だがすぐに「起業家でいたい」という気持ちが募ってきたという。

 2012年にミクシィを退社し、シンガポールに移住してシナモンの創業に踏み切った。かねてより「海外で成功したい」という夢を描いていたからだ。そこでアジア向けに写真共有アプリを開発しようと考えた。

倒産寸前、身重の体で営業に奔走

 開発拠点として目を付けたのはベトナムだった。ネイキッド時代に日本人エンジニアがなかなか解けなかった採用試験の難問をベトナム人がすらすらと解くのを目にした。国ぐるみでIT人材の育成に力を注いでおり、質の高いエンジニアを集めやすい。2013年、ベトナムに開発拠点を設けた。