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子供が生まれた際の疑問からテレワークを支援するラウンズを起業した。音声だけでちょっとした「雑談」ができる仮想オフィスサービスを提供する。400社超の導入実績をベースに新しい働き方を支える基盤づくりを目指す。

(写真:陶山 勉)
(写真:陶山 勉)
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 「人手不足で採用が難しい」「介護や出産のために仕事を諦めざるを得ない」。出社前提の働き方ゆえに悩みを抱える企業やビジネスパーソンは多い。合田翔吾はそんな課題に解決策を提示すべくラウンズを2018年に起業した。「すべての人にテレワークという選択肢を」とのミッションを掲げ、仮想オフィスサービス「roundz」を提供している。

 roundzは、気軽に同僚らに声かけができるように、あえて顔出しのためのカメラをなくし、音声だけのコミュニケーションに特化したツールだ。ユーザーインターフェース(UI)もシンプルで、ボタンはマイクのオンオフと画面共有の2つだけだ。

 日時を決めた会議などで使われているMicrosoft TeamsやZoomなどWeb会議サービスと違い、合田がroundzで狙うのはテレワーク環境における雑談の創出だ。雑談とは「おはよう」のあいさつから始まるちょっとした会話や、「ふと思いついたアイデアを誰かに話したくなった」などから始まる「突発型の対話」などを指す。オフィスで隣の人に「ちょっと」資料などを見せて話す感覚の再現を狙った。

 「楽しい、大変だなどの感情を交えた会話を日々続けているからこそ、互いに人となりがつかめて信頼関係が生まれる」と合田は指摘する。

監視ツールでは普及しない

 合田はかつて地下資源探査などを手掛ける米石油サービス大手シュルンベルジェの日本法人で、ソフトウエアエンジニアとして石油探索ソフトの開発に従事していた。起業のきっかけは子供の誕生だ。職場に正式なテレワーク制度はなく「どこでも働けるはずのエンジニアなのに、なぜテレワークができないのか」と疑問を感じた。

 企業によっては制度上、テレワークが可能であり、Web会議サービスが普及し始めていたのに、当時はテレワークで働くことが難しかった。「テレワークの制約となる課題を、エンジニアのスキルを生かして解決したい」。この思いから起業に踏み切った。