メガネ型ウエアラブル端末「JINS MEME」の立役者が新天地に踏み出した。DX(デジタル変革)を支援する企業に移籍し、事業創出に自身の経験を生かす。前職で培ったノウハウなどを体系化したDX方法論の確立も目指す。
「JINS MEMEなど新規事業を立ち上げた経験を生かして、DX(デジタル変革)に取り組む企業を支援する」。これがSun Asterisk(サン アスタリスク、Sun*)の井上一鷹の挑戦テーマだ。
井上はDXの担い手として名を知られた存在。前職では、眼鏡店JINSを展開するジンズでDXの一環として新規事業の立ち上げを担ってきた。JINS MEMEはその代表例だ。目の動きを捉えるセンサーを組み込み、利用者の仕事への集中度などを計測できるようにしたメガネと専用アプリなどからなる。井上が開発プロジェクトを主導し、2015年11月に発売にこぎ着けた。
その後、働き方改革の波を捉えた新規事業にも取り組んだ。オフィス以外の働く場としてコワーキングスペースが増えてきたのを見て、2017年12月に「ソロワーキングスペース」がコンセプトのThink Labを東京に開設した。適度な緊張とリラックスの状態をつくる空間や、森や川の自然音など様々な工夫を凝らす。
「コワーキングスペースはミーティングなど対話重視に偏りがち。集中度を計測できる技術やデータを持つジンズなら、世界で一番集中できる場所をつくれる」。そんな発想を結実させた。
2020年以降はPoC(概念実証)のテーマ選定や、選定したテーマに基づいた商品開発・サプライチェーンなど各担当部門のミッション設定を含め、ジンズ全体のDXに携わった。しかし「気持ちがどうも盛り上がらない」のを感じたという。「0から1をつくったり、1から10をつくったりする新規事業と違い、全社的なDXの取り組みは(既にある事業を)100から150、1000にする仕事だった」からだ。
「0から1をつくる」とは、何もないところから新しいサービスのMVP(検証可能な必要最小限のプロダクト)を開発し、想定顧客にとって価値があることを確認するまでを指す。「1から10をつくる」の10とは、新サービスの成長見通しが立った段階である。