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羽田空港の航空管制官を辞して物流業界に飛び込み起業した。手掛けたのはスポット配送の依頼とドライバーのマッチングサービスだ。亡き義父の遺志を継いで零細業者や個人事業主の地位向上にまい進する。

(写真:陶山 勉)
(写真:陶山 勉)
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 9年前に帰らぬ人となった義父が残した手書きの事業企画書。懐かしい字で「フリーランスドライバー クラウド軽貨物運送『軽town』」と記されている。物流テックベンチャーCBcloudのCEO(最高経営責任者)である松本隆一は、それを何よりも大切にしている。「ページを繰るうちに起業の発端となった義父のアイデアはもちろん、理念や情熱をも再確認できる」という。

 羽田空港の管制官だった松本は義父に請われて運送業界に転じた。目の当たりにしたのは、大手が中小・零細や個人事業主を下請けや孫請けに使う多重下請けの実態だった。下層になるほど単価が下がるが、ドライバーらは「断れば次の仕事がなくなる」と恐れ、仕事を引き受けざるを得ない。長時間労働と低収入にあえぐ現場があった。

義父が残した手書きの事業企画書の表紙
義父が残した手書きの事業企画書の表紙
(出所:CBcloud)
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 義父はドライバーらの待遇を改善する事業を立ち上げようとしていたが、2013年に他界する。志を継いだ松本はCBcloudを創業、2016年には荷主とドライバーをオンラインで取り次ぐ「軽town(現PickGo)」を開始した。

 荷主がスマートフォン上で運送依頼情報を入力すると、登録ドライバーのスマホに情報が配信され、両者のマッチングが図られる。ドライバーにとっては普段の運送業務の空き時間を有効に使え、新たな仕事を得やすくなる。

 当初は法人向けだったが、個人向けに間口を拡大したところ、2018年春の「引っ越し難民」問題を機に引っ越しでの利用が急増。2020年ごろからは、運び手不足に悩む外食宅配事業者の引き合いも強まった。

 要となる登録ドライバーは現在4万人を超える。もはや仮想的な運送大手と言えるCBcloudに、大企業も熱視線を送る。佐川急便とは2019年から軽貨物のチャーター運送で協業、ANAカーゴとも同年、陸便と航空便をシームレスに運送できるサービスを始めた。2021年には日本航空と同様の取り組みをスタートさせた。