アパレル業界のDX(デジタル変革)をリードするバニッシュ・スタンダード。人気サービス「STAFF START」は販売員のネットでの活躍を見える化した。販売員を評価しないアパレル業界の悪しき「スタンダード」の打破を目指す。
「販売員のスキルや貢献度が正しく評価され、報われる世の中にしていきたい」。こう語るのはアパレル業界に風穴を開けたITベンチャー、バニッシュ・スタンダードのCEO(最高経営責任者)を務める小野里寧晃だ。同社が2016年9月に立ち上げた販促支援サービス「STAFF START(スタッフスタート)」は、1700超のブランドが採用する人気サービスに育った。
販売員のネット上での活躍を可視化
店舗で働く販売員はSTAFF STARTのアプリを通じて、自身がモデルとなった自社ブランドのコーディネート画像などをEC(電子商取引)サイトやSNS(交流サイト)上に簡単に投稿できる。アパレル企業は販売員の投稿がどの程度閲覧され、売り上げにつながったかをデータとして把握する。販売員のネット上での活躍を可視化することで、成果を正しく評価できるわけだ。
アパレル業界では、ECは魅力的な販路である一方で、実店舗の売り上げを減らす存在と見られていた。販売員は店舗の売り上げで評価され、ECでの売り上げは販売員個人の評価にひも付いていないケースも多かった。その結果、販売員はECやSNS活用に積極的になれなかった。
STAFF STARTはそこに風穴を開けた。「STAFF STARTを導入するブランドの7割が、売り上げに応じて販売員に報酬を出している」という。コーディネート投稿への販売員のモチベーション向上につながり、STAFF START経由で売れた「流通額」は2021年に1380億円に達した。中には月に1億3000万円を売り上げた販売員もいる。「年収で1000万円を稼ぐ人がたくさん生まれ、子どものなりたい職業ランキングに再びアパレル販売員が載ることが僕の夢」。小野里は笑顔でこう話す。