人工衛星のデータを使って日本やインドの農家などを支援するサグリ。ルワンダで宇宙関連の教育プログラムを実施したのが起業のきっかけだ。農家の所得を向上させ、子供たちの選択肢を増やしたいと意気込む。
「学生時代に、ルワンダで小学生向けに宇宙に関する教室を開いた際、将来の夢があっても中学校、高校に行けない厳しい現実を目の当たりにした。地元で農業を営む親たちの所得向上が不可欠だと感じた」。
こう語るのは衛星データを活用した農業支援サービスなどを提供するサグリを起業し、CEO(最高経営責任者)を務める坪井俊輔だ。サグリは国内で衛星データを使った農地管理ツール「アクタバ」などを提供するほか、インドに子会社を持ち、小規模農家の収益向上を目指す事業を展開する。
アクタバは畑などを地図上で色分けして表示し、地方自治体の農業委員会の担当者が耕作放棄地を現地調査する際に利用するサービスだ。米グーグルの地図に、欧州宇宙機関(ESA)などが公開する地表観測衛星データなどを重ねて分析する。千葉市をはじめ複数の自治体で導入が進んでいる。
だが、坪井が目指す事業のゴールは他にある。その手始めと言えるのが、インド子会社で現地の農業協同組合と連携して展開するサービスだ。衛星データを基に農家が耕作を放棄していないか、農地は肥沃かどうかなどを解析し、与信情報の材料にする。銀行などはその情報などに基づき、各農家に融資している。ルワンダで感じた課題はインドでも同じ。その解決策として、このサービスを位置付ける。
源流は「うちゅう」にあり
坪井は小学生の頃から、宇宙が大好きだった。中学2年生のときには、学校行事で訪れた日本科学未来館で、宇宙エレベーターを解説するアニメーションを見て感動し、「将来は宇宙エレベーターを開発してみたい」との夢を抱いたという。
横浜国立大学理工学部に入学した際には、研究者になる道を思い描いた。ところが、ボランティア活動への参加がきっかけで、坪井の進路は大きく変わり始める。教育支援事業を手掛けるNPO法人カタリバのプログラムで、中高生の悩みを聞いたりしていたときのことだ。自分の夢を諦める子供が多いことに気がついたという。