MS&ADグループでIT・デジタル担当役員を歴任した船曵真一郎氏が2021年4月に傘下の三井住友海上火災保険の社長に就任する。グループのデジタル変革や基幹システム刷新、IT部門改革などを聞いた。
私がMS&ADインシュアランスグループホールディングスのCDO(最高デジタル責任者)に2018年に就任して3年たった。CIO(最高情報責任者)も2017年から3年間務めており、ITに直接関わり始めて4年になる。
MS&ADは2018年度から2021年度までの中期経営計画で「デジタライゼーションの推進」を掲げている。私はCDOとして、グループ全体のDX(デジタル変革)に取り組んできた。
例えば保険営業の高度化だ。2020年に人工知能(AI)を活用した代理店向け営業支援システム「MS1 Brain」の三井住友海上火災保険への導入を主導した。契約情報や顧客情報を基に、顧客への商品の提案内容やタイミングをAIが推奨する。3万8000店舗ある代理店全てに一斉に導入した。
海外ベンチャーへの投資にも注力している。インシュアテックの有力企業である米ヒッポ(Hippo)に対して、2020年7月にコーポレートベンチャーキャピタルを通じて投資し、11月には三井住友海上も資本参加して、戦略提携を結んだ。
ヒッポは家の年数や構造、屋根の状態といった複数の変数から、AIによりリスク度を算出して、保険を引き受けている。それに加えて、住宅に取り付けたセンサーから得られるデータや衛星画像の分析を基に、災害の恐れがある場合に予防措置を講じられるようなサービスを提供している。提携を通じてヒッポの技術をMS&ADグループの新規事業に役立てるつもりだ。
これは「リステック」の取り組みの一環だ。リステックはリスクとテクノロジーを組み合わせた当社の造語で、データ収集や分析を軸に企業や個人のリスクを可視化する。今後は事故の際に保険金を支払うだけでなく、事故にならないよう予防し、事故が起きたとしても被害を最小限に食い止める役割が保険会社に求められると考える。