パナソニックの経営者らから請われ、転職してCIOに着任した玉置肇氏。着任後「100日間計画」を実行し、DX(デジタル変革)に向けた体制を構築した。一刻も早くIT基盤を整備することで、ビジネスモデルの変革に備える。
どうやって断ろうか。2021年1月、大阪府門真市のパナソニック本社で当時の津賀一宏社長ら幹部に会い、東京に戻る新幹線の中でそう考えていた。津賀さんら幹部は皆「ITを立て直したい」と真剣な思いを語ってくれたが、外資系企業でのキャリアが長い自分には無理だと思った。
だが東京に近づくにつれ、次第に考えが変わった。大阪大学出身の私にとって同じ大阪府に本社を置くパナソニックは大きな存在。1989年には時価総額で世界トップ20に入っていたが、2022年1月現在では750位前後だ。日本経済の本丸であり落ち目と言われて久しい電機業界に入ることが、日本経済の復活に自分が微力でも貢献する近道ではないかと考え入社を決めた。
着任前に「100日間計画」策定
2021年3月に入社の書類にサインをして5月に着任した。3~4月は準備期間と位置付けて、社内外の関係者に積極的に会った。その中で「100日間計画」を練り上げた。パナソニックのDX(デジタル変革)に向けて、着任後の100日間で優先的に着手すべきことなどをまとめたものだ。変革準備チームの発足やタウンホールミーティングの開催、社内ブログの開設、経営戦略会議でのシステムの課題に関する説明など内容は多岐にわたる。
ゴールデンウイーク明けの5月6日が勤務初日だったが、翌日の5月7日に早速「CIOブログ」を開設した。11日には全世界のIT部門約2700人に私の思いをライブ発信し、その日の午後に変革準備チームの初会合を開いた。