アスクルはデジタル改革加速に向けビッグデータ基盤を刷新した。目指すはオフィス通販会社から「テクノロジー企業」への脱皮だ。旗を振るCTO(最高技術責任者)は終わりなきシステム内製力強化に挑む。
通販のシステム開発に携わって14年余り過ぎた。初めの7年間はヤフーのエンジニアとしてYahoo!ショッピングなどの開発を担った。2015年からアスクルに籍を置き、個人向けネット通販LOHACOの立ち上げや社内のビジネスチャットの導入などに注力した。2019年からはCTO(最高技術責任者)を務めている。基幹系システムも含めアスクルのIT戦略全体を統括する立場となり、経営に資するITの実現に向け取り組んでいるところだ。
対処すべき経営課題は多岐にわたる。主力事業のオフィス用品の通販は堅調だが、テレワークの普及などで先行きは不透明だ。ネット通販大手が法人向け事業に参入するなどライバルも増え、物流業界では人手不足が深刻化している。こうした中で成長し続けるためには、デジタル技術を活用し、サービス改善や業務効率化のスピードを大幅に速めていく必要がある。
ビッグデータ活用を強化
当社では実際に様々な手を打ってきた。2019年から2021年にかけて整備した新ビッグデータ基盤ASKUL EARTHはその1つだ。米グーグルのDWH(データウエアハウス)サービスであるBigQueryで構築し、オフィス用品通販のASKULやLOHACOの販売管理システムをはじめ、倉庫管理システムや商品データベースといった各業務システムのデータを集約した。
以前運用していたオンプレミスのDWHは容量や性能が不足し、2~3日前の販売実績データしか扱えなかった。ASKUL EARTHでは午前9時に前日までの販売実績データを参照することが可能だ。社員はBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを使ってASKULEARTHから“新鮮”なデータを取得して分析し、商品開発や売り上げ予測、販売促進活動などに活用できるようになった。