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中外製薬は2020年3月、デジタル変革(DX)の新戦略を策定した。かじ取りを担うのが日本IBM出身の志済聡子氏。デジタル基盤を整え、組織風土を改革した先に見据えるのが「AI創薬」だ。

志済 聡子(しさい・さとこ)氏
志済 聡子(しさい・さとこ)氏
1986年に北海道大学を卒業、日本IBMに入社。官公庁向け営業などを経験し、2009年から同社執行役員として公共やセキュリティー事業を担当。2019年5月に中外製薬に執行役員待遇で入社し、2019年10月より現職。(写真:陶山 勉)
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 私が中外製薬に入社したのは2019年5月。新たな環境を探していた私に、当時社長だった小坂達朗会長は「単なるIT担当役員ではなく、デジタルを使って本気で中外製薬を変えるつもりで来てほしい」と話してくれた。マーケティングのみならず「創薬」というビジネスの根幹にデジタルを生かすとの考えも聞かされた。デジタルへの強い思いを感じ入社を決めた。責任は重いが、面白さとやりがいを感じている。

 その小坂会長の強い思いが詰まった中外製薬のデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略が、2020年3月に発表した「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」だ。デジタル技術を駆使して中外製薬のビジネスを革新し、社会を変えるヘルスケアソリューションを提供するトップイノベーターとなることを目標に掲げている。

 最も重視するのが人工知能(AI)などを駆使した革新的な新薬の創出だ。製薬業界では一般に、1つの新薬を開発するのに2000億円以上の費用と10年以上の期間がかかるといわれる。しかも費用や期間は年々増加している。

 そこで、電子カルテ情報などの診療データや、ウエアラブルデバイスから取得する生体データなども活用して、新たな科学的手法による創薬の可能性を探っていく。特にAIを活用して有望な新薬候補をスクリーニングできれば、効率良く新薬を開発できるとみている。新型コロナウイルスの問題でも明らかなように、いかに早く薬を出すかは世界的な社会課題であり、その実現は製薬会社としての使命だと思う。