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ヤマトホールディングスがグループ挙げてのデジタル物流変革に挑んでいる。EC(電子商取引)向け新サービスの創出なども強力に推進する。グループの中核であるヤマト運輸のデジタル担当役員にその挑戦を聞いた。

中林 紀彦(なかばやし・のりひこ)氏
中林 紀彦(なかばやし・のりひこ)氏
1971年生まれ。オプトホールディング(現デジタルホールディングス)データサイエンスラボ副所長やSOMPOホールディングス チーフ・データサイエンティストを経て、2019年8月ヤマトHD入社。2021年4月より現職。(写真:北山 宏一)
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 ヤマトホールディングス(HD)は今、経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」による改革のまっただ中にある。2020年1月に策定したプランの目的は「経営の転換」。顧客や社会のニーズに正面から向き合う経営、データに基づいた経営、自前主義にこだわらず共創により物流のエコシステムを創出する経営への転換を目指す。

 送り状の伝票を貼って発送すれば希望する場所に荷物が届くという宅急便は1976年に誕生した。物流を支えるインフラとして45年にわたり続いており、年間約21億個の荷物を運ぶまでに成長した。

 しかし、送り状を貼りさえすればよいだけに、利用者とのデジタル接点をあまり持てていないという課題がある。宅急便センターなどの拠点のデジタル化も進んでいない。社会経済環境が大きく変化する中で危機感を持ったヤマトHDの経営陣は、抜本的な改革が必要との結論を出した。

 改革に向けて特に私が関わっているのがDX(デジタル変革)の推進だ。その具体的な取り組みの1つとして、宅急便のデジタルシフトを進めている。

 まずグループのデータを一元的に管理して活用するために「ヤマトデジタルプラットフォーム」と呼ぶデジタル基盤をクラウド上に整備している。荷物をどの時期にどの地域で配送したのか、全国約3700の宅急便センターや77のトラックターミナルではどのくらいの人員や車両が稼働しているのか、どのような配送ルートを車両が通って荷物を運んでいるのか。そんなデータをクラウド上に集めている。

 基盤の中で業務量を予測するシステムも開発している。機械学習を活用したシステムで、予測精度が上がれば需要変動に応じて適正な人員や車両を配置したり、配送ルートを改善したりできるようになる。データに基づいた判断が可能になるわけだ。