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大阪府のCIO(最高情報責任者)は公募に応じて日本IBMから転職した。スマートシティ戦略部を率い、行政DX(デジタル変革)の難関に挑む。「大阪版デジタル庁」と位置付ける同部の「民営化」という奇策を打ち出す。

坪田 知巳(つぼた・ともおき)氏
坪田 知巳(つぼた・ともおき)氏
1984年同志社大学経済学部卒、同年日本IBM入社。2014年同常務執行役員、金融・保険郵政システム事業部長兼大阪事業所長。大阪府のスマートシティ戦略部の公募部長職に採用され、2020年4月より同部部長、6月よりCIO兼務。(写真:太田 未来子)
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 私が部長を兼務するスマートシティ戦略部は、吉村洋文知事が主導して、行政DX(デジタル変革)やスマートシティ事業を推進する組織として2020年4月に新設された。府庁のIT部門だったIT業務改革課を発展させた。私は日本IBMで官公庁や企業のデジタル化を支援する仕事をしてきたが、スマートシティ戦略部の設置に伴い部長、そしてCIOに就任した。

個人情報保護の在り方を問い直す

 就任してすぐに、新型コロナウイルス感染症の感染対策として、QRコードを使った「大阪コロナ追跡システム」を全国に先駆けて導入した。これまでに飲食店など約9万8000施設、約1万3000イベントが登録し、利用者の登録件数は約460万に上る。飲食店やイベント会場を訪れた人の感染が判明したとき、同じ日に訪れた人にメールで注意喚起する仕組みだ。

 だが個人情報保護に配慮する必要があり、感染者本人が陽性登録する方式でしか実現できなかった。残念なことに、利用者が多いにもかかわらず陽性登録が進まず、十分な効果を発揮できているとは言い難い。

 新型コロナ感染症対策で、日本における行政のデジタル化の遅れが露呈したと言われるが、私は行政組織の中に入って、これほど遅れているのかとがくぜんとした。海外と比べて違いを感じたのが、あまりに慎重な個人情報の取り扱いだ。大阪コロナ追跡システムでの経験でそれを痛感した。