新型コロナウイルス禍の中、IT人材の「内製」に取り組む全日本空輸(ANA)。データ活用による顧客サービスの強化や新たなプラットフォーム事業の確立を目指す。荒牧秀知執行役員デジタル変革室長に狙いを聞いた。
航空業界は顧客サービスのデジタル化が急速に進んでいる。多くの顧客はスマートフォンなどのデジタル端末を持っており、航空業界はデジタルへの取り組みに対する感覚が研ぎ澄まされている。
当社のデジタルに対する取り組みの一例として、顧客サービス向けに「CX(カスタマーエクスペリエンス)基盤」というシステムを運用している。複数のシステムに蓄積したデータを仮想的に集約して、横串を刺したり、新しい切り口でデータを分析したりして仕事の組み立てを変えている。
CX基盤に蓄積したデータを活用する仕組みとして「CXポータル」と呼ぶシステムも2021年3月に正式稼働させた。予約センターから客室乗務員まで顧客サービスを担う各部門がデータを共有し、顧客向けに支援サービスを提供するシステムだ。
例えば往路便が遅延したなどの情報を共有できるので、復路便の機内で「○○様、行きのフライトが大幅に遅れて大変ご迷惑をお掛けしました」などとお詫びを伝えられる。顧客との関係性を深め、他社にない新たな体験価値を提供できると思っている。
「分析基盤」というシステムも用意した。蓄積したデータをデジタル変革室のデータサイエンティストが分析し、新たなサービスの提供や既存サービスの高度化などを目指している。