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工場でのIoT活用などDX(デジタル変革)に本格的に乗り出したカルビー。生産や販売などの現場主導を貫き、IT部門が「事務局」としてを支援する。旗を振るCIOにDXにおける現場主導の狙いやIT部門のあり方を聞いた。

小室 滋春(こむろ・しげはる)氏
小室 滋春(こむろ・しげはる)氏
1965年生まれ。1988年アーサーアンダーセン(現アクセンチュア)に入社しハイテク業界を担当。2008年日本SGI(現HPE)へ転職、IT及び業務オペレーション責任者を務める。2015年にカルビー入社し、情報システム本部長を経て2017年より現職。(写真:陶山 勉)
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 「なぜIT部門がシステム子会社として切り出されずに、カルビー本体にあるのかを考えよ」。私は常々、IT部員にそんな話をしている。社内の組織である以上、そしてあり続けるためには、IT部員が自社のビジネスを社内の誰よりも理解していなければならない。

 そんなIT部門が事務局の役割を務めるのがDX推進委員会だ。2019年度から5カ年の中期経営計画にDX(デジタル変革)の推進が盛り込まれ、私がその推進役を担うことになった。そこで2019年9月にDX推進委員会を立ち上げ、生産や営業、マーケティング、物流、購買、財務などの各部門からメンバーを出してもらった。

 それぞれの現場が抱える課題に取り組めるように、メンバーは執行役員ではなく現場の部課長クラスにした。当然、委員会のスタンスは「まずはやってみる」だ。新商品は試作品を作ることから始まる、やったことがないDXについても議論よりまずは作ってみるという考え方だ。委員会のメンバーがリーダーとなって各現場でプロジェクトを立ち上げ、IT部員もプロジェクトに入って支援する形で推進している。

IoTの導入で大きな成果

 現在は6つのプロジェクトが進行している。大きく進展したのが、生産現場でのIoT(インターネット・オブ・シングズ)によるデータ収集と活用だ。

 当初は、工場の装置に取り付けたセンサーなどからデータを取得することで、日報作成の自動化を目指すところからスタートした。日報は現場の状況や課題を報告する上で極めて重要なものだが、従来は作業員が紙に手書きし、それをExcelで集約していた。これを省力化しようとしたわけだ。