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2023年2月に米ファンドの下で再出発を切るそごう・西武。OMOストアなど新しい百貨店としての施策を相次いで打ち出す。DX(デジタル変革)を主導する田口広人常務に手応えや今後を聞いた。

田口 広人(たぐち・ひろと)氏
田口 広人(たぐち・ひろと)氏
1985年西武百貨店入社、2010年そごう・西武IT推進室長。2016年にセブン&アイ・ネットメディア社長(現任)、2021年10月セブン&アイ・ホールディングスグループDX推進本部副本部長、グループDXソリューション本部副本部長(現任)。2022年3月より現職。(写真:陶山 勉)
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 百貨店に合ったOMO(オンラインとオフラインの融合)の姿を模索している。今様々な取り組みを進めているが、特に手応えを感じているのが、2021年9月にOMOストアとして西武渋谷店に設けた「CHOOSEBASE SHIBUYA」だ。

 D2C(消費者への直接販売)ブランドや地方の商品などを扱っており、店頭商品に添えられたQRコードを読み取ると詳しい商品情報が見られる。その場でも買えるし、公式EC(電子商取引)サイトと連動しているので、店頭で見た商品をじっくり検討して後からオンラインで買うこともできる。出店ブランドは当初から3倍に増え、収益面でもオープン前にあった元の売り場の売り上げを軽く超えている。

 OMOはオムニチャネル(ネットと実店舗を統合した販売方法)と同一視されがちだが、私の中では別物だ。オムニチャネルは店舗やWebサイトなどのチャネルを統合し、様々な顧客接点を持とうとする企業視点の考え方だ。一方、OMOはリアル店舗があって、オンラインのチャネルや決済手段などが取り巻くイメージだ。その中心にいる顧客の視点で、買い物体験の向上や不便さの解消に統合的に取り組む。

 CHOOSEBASE SHIBUYAの成功要因は3つあると考えている。1つ目はSNS(交流サイト)を使った口コミ拡散により、若年層の集客ができていること。2つ目はD2Cブランドが出展しやすい環境を整えたこと。3つ目はその場でも商品を渡せるようにしたことだ。

 その場で商品を渡せるようにしたのは商品と出会い、試着などを経て購入し、帰宅後に封を開けた瞬間の喜びを味わうなどの一連の流れを大切にしたいと考えたからだ。私は米サンフランシスコの「売らない店」で、その場で商品を受け取れないことへのもどかしさを感じたことがあり、その体験も生かした。売らない店として紹介される機会も多いが、これが百貨店に合ったOMOの一つの形だと考えている。