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 2020年にブレーク必至のITインフラ技術を選考する「ITインフラテクノロジーAWARD 2020」。グランプリの「クラウドネイティブ」に続く第2位は「5G(第5世代移動通信システム)」、第3位には「サイバーセキュリティー」が選ばれた。順に解説していこう。

第2位 5G(第5世代移動通信システム)
高詳細カメラが医療現場で生きる

 5Gは4G(第4世代移動通信システム)に代わる次世代の移動通信規格である。主な特徴には、毎秒10Gビットの高速な伝送速度、1ミリ秒という遅延時間の小ささ、1平方キロメートル当たりの同時接続数が100万点という多さ、という3つがある。

 2020年春からNTTドコモもなどの主要キャリアがサービスを開始する予定だ。2020年は「5Gを通信インフラにするキラーアプリの模索が始まる年になる」として審査会では2位にランクインした。

 国立情報学研究所の佐藤一郎情報社会相関研究系教授/所長補佐は「5Gの特徴の中でも低遅延に注目する」と話す。低遅延の恩恵を受けるのは自動運転やエッジコンピューティングなどが最たる例だろう。自動車に搭載したセンター情報を素早く判断して返すような処理には5Gの低遅延通信は欠かせない。

5Gの通信インフラの利用が有望視される分野
5Gの通信インフラの利用が有望視される分野
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 エッジコンピューティングも恩恵を受ける。例えば移動通信網のエッジに当たる基地局にコンピュータリソースやストレージを配備し、新たなアプリケーションやサービスの提供を可能にする「モバイルエッジコンピューティング」などが考えられる。ITジャーナリストの新野淳一氏も「4Gの登場でYouTubeなどの動画配信サービスが流行し、企業も動画で情報配信するようになった。5Gも同様にキラーアプリが登場するのではないか」と新サービスに期待を寄せる。

 ただしエンタープライズ分野への影響は「今のところ見通しづらい」(新野氏)。試験的な5GコンテンツがHMD(ヘッドマウントディスプレー)を使ったVR(仮想現実)サービスなどにとどまっているためだ。

 そんな中、企業情報化協会の森正弥常任幹事会幹事は「8Kの解像度を映せる高詳細カメラによる情報配信が5Gのコンテンツとして有望」と話す。高解像度の動画を遠隔地で確認するには5Gの高速な伝送速度が必要になるためだ。

 8Kカメラの映像配信の用途を国立情報学研究所の佐藤教授は「医療現場で利用が見込める」と説明する。例えば手術の中継だ。4Kカメラでは手術の縫合に使う糸が細すぎて確認できないが、8Kカメラなら撮影可能だという。これまで手術のテクニックを習得したい人は現場に行かなればならなかった。しかし「8Kカメラと5Gにより遠隔地で確認できるようになる」(佐藤教授)という。

Webアプリ開発がシンプルに

 5Gによって、Webアプリケーション開発の常識も変わりそうだ。

 野村総合研究所の石田裕三上級アプリケーションエンジニアは「Webアプリケーションのクライアント側の作りが変わる」と予想する。これまでWebアプリケーション開発では、通信負荷を軽減するためサーバー側で無駄なデータ転送を発生させない工夫が必要だった。例えばクライアントからの要求のたびにデータベースにアクセスするような場合は、処理の状態をサーバー側で保持するステートフルな作りが一般的った。

 しかし通信帯域が5Gで拡大すれば「並列処理化して広い帯域を確保できるようになる」(石田上級アプリケーションエンジニア)という。わざわざサーバー側で状態を保持する必要もなくなり、処理要求ごとにWebアプリケーションから直接データベースにアクセスする構成で済む。「シンプルなWebアプリケーションの作りになりそうだ」という(同)。