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 金融×ITの専門誌「日経FinTech」2019年8月号に掲載した「Libraからの挑戦」を再掲する。その後、一部の決済事業者がLibra構想への参加を見送ったが、各国の中央銀行がデジタル通貨構想を相次ぎ打ち出すなど、Libraの余波は今も続いている。

日本で「仮想通貨」になるか

 前回の記事で紹介したように、Libraを法的にどう位置づけるか、各国の当局は頭を悩ませている。日本の法制度におけるLibraの位置づけについては「資金移動業」の扱いが妥当との意見が多い。ではLibraを、Bitcoin(ビットコイン)などと同じ仮想通貨(暗号資産)として扱える可能性はないのか。

 前例はある。少数の検証ノードが取引を承認する形態としては、LibraはRippleの「XRP」に似ている。価値を安定化させるステーブルコインでいえば、ブロックチェーン推進協会(BCCC)が発行した「Zen」がある。現在は交換所内でのみ取引できるが「最終的にはパブリックチェーンとして運用したい」(BCCC代表理事の平野洋一郎氏)。XRPとZenはどちらも資金決済法上の「仮想通貨(今後施行される改正法では暗号資産)」として扱われている。

●ステーブルコインの分類と具体例
●ステーブルコインの分類と具体例
(新経済連盟の資料などを基に日経FinTech作成)
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 楽天を中心とする新経済連盟は2019年7月、ブロックチェーンと暗号資産に関する要望を金融担当大臣などに提出。この中で、ステーブルコインが暗号資産に当たるかについての独自基準を提案した。新経連の担当者は「複数の仮想通貨交換業者が匿名で議論に参加した。ステーブルコインの扱いについて金融庁から明確な判断基準は出ておらず、事業者からあるべき姿を提示する必要があった」と語る。

 具体的には「単一の法定通貨建てか否か」を基準とし、Tetherなどの単一通貨建てトークンは資金移動業や前払式支払手段、Libraを含むそれ以外のトークンは暗号資産として扱うことを提案した。

FATFが新規制を求める

 Libraがどの位置づけになるにせよ、「AML/CFTの規制からは逃れられない」(bitFlyerBlockchainの加納裕三代表取締役)。世界各国のマネーロンダリング対策を審査する国際組織「金融活動作業部会(FATF)」が、仮想通貨の事業者にも銀行に近いレベルの対策を求め始めたためだ。Libra構想を含め、世界中の仮想通貨関連事業が影響を受けることになる。

 国内の仮想通貨交換業者は近年、取引監視の体制を強化している。警察庁が2019年7月に公表した警察白書によれば、犯罪収益や資金洗浄の疑いがあるとして同業者が申告した取引件数は7096件で、前年の10倍超だった。口座開設時にもKYC(Know Your Customer)をした上で「民間企業や半官半民の団体が持つ反社会的勢力などの情報を基に、顧客のフィルタリングを実施している」(コインチェック上級執行役員の和田晃一良氏)。

 セブン銀行は2019年1月、電通国際情報サービス(ISID)と共に「eKYC」の合弁会社設立を検討することで合意した。顧客として地方銀行などのほか「仮想通貨交換業者にも声を掛けている」(セブン銀行7BK-CSIRTエグゼクティブアドバイザーの安田貴紀氏)。

 同銀行は新規口座開設時に、住所や年齢が偏るなど不自然な動きはないかなどを、自動処理と手作業を使い分けながら監視している。こうしたノウハウは仮想通貨交換業の実務にも生きるとみる。KYCや取引のモニタリングといったAML/CFTの体制で、日本の交換所は世界に先行していると言える。