全2753文字

 金融×ITの専門誌「日経FinTech」2019年10月号に掲載した特集「キャッシュレスの夜明け」を再掲する。本特集が示したサービス間競争はさらに激化し、事業者の淘汰と集約が進みつつある。

 この1年で急速に種類が増え、過当競争の様相を呈してきたスマートフォン決済サービス。事業者の鼻息は荒い。背景にあるのは、2019年10月1日に消費増税と同時に始まったキャッシュレス・消費者還元事業だ。「確実に利用者の増加につながっている」と各社は口をそろえる。

 10月1日の「楽天ペイ」アプリダウンロード数は、9月1日に比べ10倍増えた。9月5日時点で400万人だった「メルペイ」の利用者は、10月16日に500万人に達した。同社は100万ユーザーを獲得するのに約2カ月かかっていたが、その半分の期間で獲得できた格好だ。

 大規模な還元キャンペーンを繰り返し、サービス開始1年で1500万ユーザーを獲得した「PayPay」を筆頭に、スマホ決済事業者は利用者や加盟店の獲得に意欲を燃やす。「サービス提供開始から3年間は投資フェーズ」と、「d払い」を提供するNTTドコモでプラットフォームビジネス推進部ウォレットビジネス推進室長を務める田原務氏は割り切る。

●主なスマホ決済サービス
●主なスマホ決済サービス
*1 アカウント登録を行った人数 *2 メルペイ「電子マネー」の登録を行ったユーザーと「メルペイコード払い」「ネット決済」「メルペイあと払い」などの利用者の合計(重複を除く)
[画像のクリックで拡大表示]

 だが、キャンペーンや還元事業の効果には限りがある。スマホ決済サービスを使い始めたユーザーが、そのまま利用を続ける保証はない。「継続して使ってもらえるサービス」をいかに実現すべきかを考える時期に来ている。

 順調な滑り出しを見せたスマホ決済だが、死角は存在する。(1)効率のよい加盟店開拓のための事業者間の連携、(2)データ活用の推進、(3)チャージ手段の拡大という三つのポイントを見ていく。

コード統一を目指す

 現状では、スマホ決済事業者が個別に利用者や加盟店の獲得、サービスの普及を進めているケースが多い。だが、互いに連携できる部分は手を組み、余力をサービスの充実などに充てた方が効率的だ。

 スマホ決済の分野では、事業者間の提携に関して二つの取り組みが進んでいる。一つめはバーコードやQRコードの標準化。経済産業省などが中心になり設立したキャッシュレス推進協議会が「JPQR(統一QR)普及事業」として実施している。

●利用者や加盟店獲得に向けた競争のポイント
●利用者や加盟店獲得に向けた競争のポイント
JPQR:統一QR
[画像のクリックで拡大表示]

 キャッシュレス推進協議会は2019年3月29日に「コード決済に関する統一技術仕様ガイドライン」を公表。このガイドラインに基づき、各社がバラバラに策定していたバーコードやQRコードの仕様を統一すれば、一つのバーコードで複数のスマホ決済サービスが利用可能になる。スマホに表示したバーコードをPOSシステムなどで読み込む「利用者提示型(CPM)」と、店舗情報などが記録されているQRコードを利用者がスマホで読み取って決済する「店舗提示型(MPM)」の2種類を用意している。

●JPQRが定義している二つの方式
●JPQRが定義している二つの方式
[画像のクリックで拡大表示]

 コードを統一すれば「加盟店の利便性が高まる」とキャッシュレス推進協議会事務局長常務理事の福田好郎氏は話す。コードがバラバラの状態では事業者ごとにバーコードを読み取れるようにPOSシステムを改修したり、店頭にQRコードを設置したりする必要がある。JPQRを使えば、そうした手間が不要になるからだ。