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 金融×ITの専門誌「日経FinTech」2019年10月号に掲載した特集「キャッシュレスの夜明け」を再掲する。本特集が示したサービス間競争はさらに激化し、MoPAの解散、Origami Payのサービス停止発表と、事業者の淘汰と集約が進みつつある。

 前回に紹介したコード仕様統一と並ぶ、事業者間の提携に関するもう一つの取り組みは「Mobile Payment Alliance(MoPA)」だ。加盟店拡大に向けた施策「加盟店アライアンス」を共同で進める。

●Mobile Payment Alliance(MoPA)の狙い
●Mobile Payment Alliance(MoPA)の狙い
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 2019年3月にLINE Payとメルペイが設立した。6月にNTTドコモ、9月に「au PAY」を提供するKDDIが参加し、現在は4社が加盟している。LINE Payとメルペイは、共同営業による加盟店の開拓や申し込みの一本化なども進めているという。

 さらに各社の営業担当者が、MoPAに参加している他の事業者のサービスに関する営業も担当する、といった取り組みにも着手している。参加企業が得意とする営業分野を手掛けながら、加盟店の拡大を目指す。

 最終的にMoPAが狙うのは、各社独自のQRコードで加盟事業者全ての決済サービスを利用可能にする加盟店の相互開放だ。各社とも既に相互開放に向けたシステム開発に着手しているという。MoPAの相互開放が本格的に始まれば、加盟事業者の決済サービスが利用可能な加盟店は一気に拡大することになる。

 JPQRにせよMoPAにせよ、PayPayや楽天ペイといったほかの主要プレーヤーを陣営に引き込めるかどうかが今後の焦点となる。それが難しく、活動が中途半端に終わるようでは、ユーザーや加盟店の混乱をかえって助長する恐れも出てくる。

信用スコアで新サービス創出

 スマホ決済に潜む二つめの死角は、データ活用の推進だ。スマホ決済事業者が今後の事業拡大に向けて欠かせないのが、決済以外の新サービスの創出。少額決済サービスだけを提供していても、サービスの差異化は難しい。

 新サービス創出の鍵を握るのが、各社が保有するデータの活用だ。スマホ決済事業者のほとんどは、Webサービスや小売業といった「本業」を持っている。自社が既存事業で保有するデータと決済データを活用して独自のサービスを生み出す、というのが基本的な考え方だ。

●データを活用した新サービス創出の動き
●データを活用した新サービス創出の動き
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 既にデータ活用に向けた取り組みは始まっている。メルペイは、メルカリやメルペイの利用状況から算出した信用情報とメルペイの決済サービスを組み合わせた新サービスの提供に乗り出している。メルペイは2019年4月に後払いサービスの提供を始め、2020年初めにも分割払いを実施すると表明。「約束どおりに支払ったか」といったメルカリの約束履行状況に関するデータを利用する。

 LINEも6月にスコアリングサービス「LINE Score」を始めた。年収のような属性などに関する質問に対する回答とLINEの利用状況からスコアを算出する。スコアは今後、LINE Payが提供予定の決済サービスに活用する見込みだ。

 CRM(顧客関係管理)の実践も、典型的なデータ活用例である。「これまでレシートを通じてクーポンを配布するなど、限られた手段でしか顧客に還元できなかったサービスがアプリ経由で可能になる」。「ファミペイ」を提供するファミリーマートデジタル戦略部長の植野大輔氏はデータ活用の可能性についてこう話す。主にファミリーマート店舗での利用を想定しているファミペイの場合、決済データと同時に「何を買ったか」に関するPOSデータを取得できる。それを基にパーソナライズしたクーポンを配布するといった販促が可能になる。

 こうした販促は決済データだけでも実行できるため、PayPayなどは加盟店支援の一環として検討している。NTTドコモは11月からd払いアプリ内で、加盟店のアプリを利用できる「ミニアプリ」機能を提供する。将来的にミニアプリを利用する加盟店が増えれば、利用頻度が多かったり近所にあったりする加盟店のアプリを優先的に表示する施策を考えている。