PR
全3471文字

世界で「接合革命」が起きている。軽量化や材料の多様化により、これまでの溶接から接着剤への置き換えや併用が進んでいるのだ。接着技術で日本は世界をリードする。中でも、著しい研究成果を出しているのが、接着の「見える化」だ。接着の見える化とは何か。産業技術総合研究所(産総研)接着・界面現象研究ラボ研究ラボ長であり、東京工業大学科学技術創成研究院教授の佐藤千明氏に聞いた。

界面の状況が見えるようになり、接着剤のメカニズムがよく分かるようになった。従って、今後はより使いやすい接着剤が出てくる可能性がある。ISO(International Organization for Standardization;国際標準化機構)化の動きも出てきた──。ここまでの話を振り返るとこうなります。では、ユーザーが接着剤をうまく使いこなすために必要な課題は何でしょうか。

佐藤氏:2つあります。1つは、接着剤を使った接合部の設計に慣れてもらうことです。というのも、接着剤の強度評価の規格は溶接や材料のそれとはかなり違っているからです。しかも、まだ十分に完成された世界ではありません。接合部の強度設計に関して、より正確な設計法を確立する必要があるため、まだまだいろいろな規格を作っている段階です。

 加えて、接合部の耐久性の保証法を確立する必要があります。ここがまだ完成したとは言い難く、発展途上というところです。その理由は、我々は「実験力学」と呼んでいるのですが、実験的に強度のパラメーターを求めるのは接着の場合、とても難しい。そもそも計測しにくいターゲットなのです。

佐藤千明氏
佐藤千明氏
東京工業大学科学技術創成研究院教授。日本の構造接着技術を引っ張る。(写真:寺尾 豊)
[画像のクリックで拡大表示]

 例えば、接着の界面の強度を調べるときには破壊エネルギーというパラメーターを調べなければならず、これを求める規格にはDCB(Doble Cantilever Beam;双片持ちはり)試験編を使います。2枚の板を貼り合わせて離していく試験片です。測定時に加わった力と亀裂(クラック)を同時に計測しなければなりません。ところが、このクラックの先端が見えにくくて世界中の技術者が困っており、世界で同じ実験をしているのに結果が違っているのです。こうしたところには最新技術を導入し、正確に測れる技術を研究しなければなりません。

 幸い、産業総合研究所には「応力発光材料」という特殊な材料を開発したグループがあり、対象に塗るだけで応力集中点やクラックの先端が光って目で見える新しい技術を開発しました。この研究はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトでも引き続き改良を行っており、これを使えば、世界中で誰が行っても同じような結果が得られるようになります。

技術が進化しているので、ユーザーは接合部に慣れろということでしょうか。

佐藤氏:試験規格自体は研究者がきちんと確立することが求められます。応力発光材料のような最新技術を使って研究結果をきちんと規格化し、ユーザーにはそうした規格に慣れてもらって、実験で出てきたパラメーターを勉強してもらわなければなりません。しかし残念ながら、現時点では規格も不十分だし、使い方を教えてくれる人がいないという問題があります。

 ただ、日本接着学会などが接着の接合部に関する設計法の講習会やセミナーなどを積極的に開催しているので、そうしたものを利用するとよいでしょう。また、将来的には接合部の設計に関してきちんとしたフレームワークを確立しようと我々は計画しています。ISOの資格などを取得した人はしかるべき能力があると認定できる。従って、そうした資格を目指してもらうことなどを通じて、フレームワークを作っていきたいと考えています。

この記事は有料会員限定です

日経クロステック有料会員になると…

専門雑誌8誌の記事が読み放題
注目テーマのデジタルムックが読める
雑誌PDFを月100pダウンロード

有料会員と登録会員の違い