手術支援ロボットの導入が進む分野の1つが整形外科・脳外科の領域である。股関節や膝関節に人工関節を適用する手術や、脊椎の固定、脳組織の検査などの手術を支援する複数のロボットが世界で開発されている。
このうち日本では、人工関節を股関節に適用する「変形股関節全置換術」と膝関節に適用する「変形膝関節全置換術」が2019年に保険収載された。いずれも通常の手術に比べて2000点(2万円)の保険点数が追加される。対応するロボットとして、例えば米ストライカー(Stryker)の「Mako」(メイコー)、英スミス・アンド・ネフュー(Smith & Nephew)の「NAVIO」(ナビオ)が日本で販売されている。2019年末時点で、Makoが9台、NAVIOが8台、日本に導入済みである。
Makoを利用する神戸海星病院 整形外科 リウマチ・人工関節センターの柴沼均副院長は、「自分で手術をすれば90点以上の結果を得る自信があるが、ロボットを使えば常に100点の手術が可能になる」と、手術支援ロボットに信頼を寄せる。
人工関節の手術は、骨を削って人工関節を設置する場所を確保した上で、人工関節を正しい位置に設置する必要がある。削るのも設置するのも「角度や位置が重要で、経験がある医師でも難しい」(柴沼氏)という。これに対してロボットは、正しい角度や位置の制御を支援してくれるので、手術の精度が高まり、人工関節の位置がずれたり、不要な部分を削ったりすることが少なくなる。結果として、患者の痛みが減ったり、回復までの期間が短くなったりする。
実際に神戸海星病院では、人工関節手術の後に杖(つえ)歩行ができるようになるまでの期間(杖歩行自立期間)が短くなるなどの効果が現れている。従来の手術で約12日間だったのが、手術支援ロボットを使った場合は約10日間になった。
ただしロボットはまだ高価なため、導入費を回収することは容易ではない。例えばNAVIOの価格は3年間の保守費用を含めて約9000万円に上る。高額のロボットを導入するのは、最先端の医療によって安心・安全を患者に提供するためである。Makoを導入した神戸海星病院では、実際に患者が増加するなど、ロボット導入の効果が現れているという。