全6117文字
PR

 東京オリンピック・パラリンピックの開催と前後し、2000年代からの都市再生ムーブメントに一区切りがつく。国際水準の都市づくりの進展や、関連するインフラの充実が期待されてきたが、果たして東京はどこに向かおうとしているのか。20年以降のキーワードとなるエリアマネジメント、スマートシティなどの観点から、識者4人に展望を語り合ってもらった。

座談会の様子。左から、東京芸術大学准教授の藤村龍至氏、ライゾマティクス・アーキテクチャー主宰の齋藤精一氏、国土交通省都市局市街地整備課長の渡邉浩司氏、東急執行役員の東浦亮典氏(写真:澤田聖司、会場協力:Shibuya Open Innovation Lab)
座談会の様子。左から、東京芸術大学准教授の藤村龍至氏、ライゾマティクス・アーキテクチャー主宰の齋藤精一氏、国土交通省都市局市街地整備課長の渡邉浩司氏、東急執行役員の東浦亮典氏(写真:澤田聖司、会場協力:Shibuya Open Innovation Lab)
[画像のクリックで拡大表示]

藤村(龍至)(各者のプロフィルは以下ページ内を参照) 大規模都市開発プロジェクトにおいて、うまく使われるものを目指すというときに無視できないのが、エリアマネジメントや、その前提になる公民連携の考え方です。ただ、いずれも少し形骸化しがちな印象を持っています。最終的に何が目的なのかが問われます。

 根本のところに戻ると、共有資産を共同管理するというパブリックでもプライベートでもない原理をどうつくっていくかなんです。それを現代型に置き換えていくための本質論が、まだしっかりできていません。1980年代に生まれ始めた「まちづくり協議会」に、やはり形骸化している面があって、次のバージョンを見いださなければ本当にエリアを動かすものにはなっていかないと思います。

渡邉(浩司) 東京のような大都市型のエリアマネジメントで事務局に企業が入っている場合は、それで回っている面があります。ただ、もう少しミクロに見ると、やはり地元の方々の参加意識がなければ、うまくいきません。

 藤村さんのおっしゃる、かつての「まちづくり協議会的なもの」というのは、社会的な意識の高い方々が自分たちの住環境を守るために取り組む保全型の傾向のものですよね。例えば、よく名前の挙がる南池袋公園では、2つの方向性の活動がバランスを取って存在しています。一方は保全型で、おかしなことが起こらないようにチェックしている。もう一方は、自分たちの思い描く未来を実現しようという意識を持つ人たちが、いろいろな人を巻き込みながら非常にアクティブに活動しています。

 後者のような存在が現れなければ、単にお金を用意してお膳立てをしてあげるだけでは動きません。さらに、そんなふうに参加意識を持つ人が乗り出してくれている活動をどう持続可能なものにするか。それが今後の課題になると思います。

ミクロな判断が働くようになればビジネスの可能性が高まる

齋藤(精一) 今までのエリマネ(エリアマネジメント、以下同)は非常に受動的というか、公共施設や公共空間をアクティブに使っていくような方向になりにくいですよね。というのは、PPP(Public Private Partnership)にせよPFI(Private Finance Initiative)にせよ、民間からしたら全くもうからないじゃないですか。3年間は補助金でしのぎ、それが4年目に切れた時点で、もうけが出ないような構造だったら普通、民間は参加しませんよ。それだったら全部やめてしまい、誰も使わない公園に戻した方がいいくらいです。

東浦(亮典) 大きな問題ですよね。

齋藤精一(さいとう せいいち)氏
齋藤精一(さいとう せいいち)氏
ライゾマティクス・アーキテクチャー主宰/1975年神奈川県生まれ。コロンビア大学建築学科で建築デザインを学び、2000年からNYで活動開始。後に帰国し、フリーランスのクリエーターを経て、2006年ライゾマティクス設立、16年よりライゾマティクス・アーキテクチャー主宰。2018~19年グッドデザイン賞審査委員副委員長、2020年ドバイ万博クリエイティブアドバイザー。2025年大阪・関西万博People's Living Lab促進会議有識者を務める(写真:澤田聖司)
[画像のクリックで拡大表示]

齋藤 遊休資産を有効活用しようというときに自治体はハードの整備まではしてくれますが、ソフトのところの伴走なりキュレーションなりには関与してくれません。屋外広告なんかも、この内容だったら、この場所に掲げていいとか、もう少しミクロな判断が働くようになれば、公共空間を使うビジネスの可能性が高まるはずです。みんな一度はエリマネをやってみるけれど、結局やけどをしてやめるというのを何とかしなければいけないと思っています。

東浦 我々もいろいろなところでエリマネを担い、渋谷の一般社団法人では私が代表理事を務めています。都市型と郊外型では少し状況が違いますけれど、いずれにしても持続可能かどうかは課題で、特に経済面ですよね、お金が回らないので、実情として9割ぐらいのエリマネ団体は、そのままでは継続活動できないんじゃないかと想像できます。

 企業が下支えをしている都市型のエリマネだけは何とか体裁は整っていると思いますけれど、それも場所によっては体のいい自治体の下請けになっているように見受けられます。お互いの関係性がイコールパートナーにはならず、相変わらずお上に伺いを立てるようなポジションになっている。そんな精神的なところから変えていかなければいけません。

この記事は有料会員限定です

日経クロステック有料会員になると…

専門雑誌8誌の記事が読み放題
注目テーマのデジタルムックが読める
雑誌PDFを月100pダウンロード

日経電子版セット今なら2カ月無料