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齋藤 電鉄会社は移動に対して課金してきたわけですけれど、今のGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)などのようにデータに一番価値があるのだという認識に立てば、それを取得する代わりに移動は無料で提供するような考え方もあり得るわけですよね。そうしたビジネスを下支えする柱として、やはりスマートシティに類するプラットフォームが絶対に大事になってくると思いますよ。

渡邉浩司(わたなべ ひろし)氏
渡邉浩司(わたなべ ひろし)氏
国土交通省都市局市街地整備課長/1962年生まれ。85年東京大学工学部都市工学科卒業後、旧建設省入省。国や地方公共団体で主に都市計画・都市整備分野の業務に従事。2010年より国土交通省都市局都市計画調査室長、12年よりJR東日本ターミナル計画部担当部長。14年より豊島区副区長として池袋駅周辺のまちづくりに携わった後、16年より国土交通省都市局街路交通施設課長、18年より現職。日本大学客員教授、博士(工学)(写真:澤田聖司)
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渡邉 国交省としては現実のフィジカルなものをつくるのが仕事ですから、それをきちんと達成するのは当然で、そこにサイバーの知恵を組み合わせて人間中心の社会を実現するんだ、と。それがソサエティー5.0の目指しているところです。

 インフラのストックのリノベーションなどもさま変わりします。例えば今、街路の空間って、車が80%ぐらいの面積を占めて使っているわけですけれど、そう規定されているわけではないんです。100年前に街路構造令で決めたときに、例えば大阪・御堂筋のような幅員約44メートルの道路というのは、車が走るための広さではなかった。街なかの人間のための空間として、44メートルで整備した道路なんです。それがいつの間にか車に占められてしまったわけです。

 スマートシティになって、技術で解決できるようになれば、そうした道路も、ひょっとするともう一度人間のための空間として取り戻せるかもしれません。それによって街を変えていけるし、人間中心の社会を実現できる。そんな目的意識を持ってスマートシティに関わっていかなければいけないと考えています。

「それぞれの人を高い解像度で見よう」とするのがスマート化の本質

東浦 (都市再生特別措置法などにおけるインセンティブである)容積率に代わるものは何かという話題が残っていますね。民間企業としては、スピードなんですよ。いくら床をもらっても困る時代が来るとしたら、やはり床に代わるものは合意形成と意思決定のスピード感だと考えています。

藤村 意思決定のスピードは上げられるとしても、合意形成は結局、住民が相手なので難しいものですよね。

齋藤 その難しさを解決するために、さっきのスマートシティの在り方が関係するのだと思います。要は技術によって全部オートメーションにしようとしているわけじゃなく、むしろ、それぞれの人を、もっと高い解像度で見ようという話ですよね。

座談会の様子。会場は、東急が運営するオープンイノベーションの拠点「Shibuya Open Innovation Lab」(写真:澤田聖司)
座談会の様子。会場は、東急が運営するオープンイノベーションの拠点「Shibuya Open Innovation Lab」(写真:澤田聖司)
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藤村 今話題にしているようなスマートシティ的なエリアというのは、どれぐらいの広さの単位で考えるものなのですか?

東浦 渋谷なら、(東急が提唱する)「グレーターシブヤ」ぐらいの規模があれば、十分に成立すると思います。

藤村 渋谷駅を中心に半径2.5キロとされているエリアですね。となると、それこそ昔言われた(1994年の「副都心育成・整備指針」などが定めた)副都心ぐらいの規模というか、東京都心部を7つに分解するぐらいのスケール感をイメージすればいいのでしょうか。

東浦 そうですね。

藤村 今後クリティカルに語り得るとしたら、じゃあ、それぐらいの単位に分けて東京がマネジメントされていくようなイメージを描けるかどうかですね。

東浦 国も東京都も、それから渋谷区も掛け声として、いわゆる「イノベーションエコシステム」をつくっていこうと言っています。実装にまでたどり着けるかには、やや疑問があるんですけれど、もしやるならば、渋谷に「イノベーションエコシステム特区」を設定し、さっき齋藤さんがおっしゃったようなデータを取られるけれど、必ずサービスとして返す、そんな形の実験都市にしてはどうかと考えています。集まっている企業や人材のリテラシーとしても向いている街だと思います。