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大成建設が、日本で初めて超高強度繊維補強コンクリート(UFC)による橋を建設したのは2002年。以来、様々な構造物がUFCで造られてきた。同社のUFCの実績は、3万m3に上るほどだ。強度の高さを生かした薄さや耐久性の良さが売りだったが、今でも進化を遂げており、さらなる特徴を磨いている。補修・補強用に使う材料としての開発も進んできた。

 「超高強度繊維補強コンクリート(UFC)」を使った構造物を、国内で着々と造ってきた大成建設は2019年4月、竣工から10年以上経過した2件の構造物の経年調査結果を発表した。調査の対象は、「酒田みらい橋」(02年供用開始)と、「東京モノレール軌道桁」(07年供用開始)だ。

 酒田みらい橋は、国内初のUFCを採用したPC(プレストレスト・コンクリート)構造の歩道橋として知られる(写真1)。満潮時に海水が逆流する他、日本海からの飛来塩分を含んだ季節風が吹き付ける厳しい環境にあるため、鉄筋を入れないUFCを採用。他方、東京モノレール軌道桁ではUFCの適用で、通常の2倍となる最大桁長40mを実現した(写真2)。

写真1■ 酒田みらい橋(山形県酒田市)の全景。採用したUFCは、仏ブイグなど3社が保有する「ダクタル」の配合思想を基に、太平洋セメントが日本国内向けに開発した「日本版ダクタル」(写真:大成建設)
写真1■ 酒田みらい橋(山形県酒田市)の全景。採用したUFCは、仏ブイグなど3社が保有する「ダクタル」の配合思想を基に、太平洋セメントが日本国内向けに開発した「日本版ダクタル」(写真:大成建設)
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写真2■ 東京モノレールの軌道桁。重量の低減や製作精度の向上が見込めるUFCを適用することで、最大40mの長さの軌道桁を構築した(写真:大成建設)
写真2■ 東京モノレールの軌道桁。重量の低減や製作精度の向上が見込めるUFCを適用することで、最大40mの長さの軌道桁を構築した(写真:大成建設)
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 構造物全体の外観目視や塩化物イオンの侵入深さなどを調査した結果、どちらも、内部の劣化や剛性の低下は生じていなかった(図1、写真3)。中でも注目に値するのが、劣化要因となる塩化物イオンの侵入がほとんど無かったことだ。塩害を受けやすい酒田みらい橋でも、塩化物イオンの侵入深さは1~2mm。東京モノレール軌道桁ではゼロだった。

図1■ 十数年たっても優れた耐久性能を維持しているUFC
調査項目 酒田みらい橋 東京モノレール軌道桁
構造物全体の外観目視調査 外観の変状や点さびの進展などが生じていない
塩化物イオンの侵入深さ(一軸圧縮強度試験) 1~2mm 0mm
UFCの強度低下や耐久性に起因する劣化は生じていない
構造物の固有振動数 1.37Hz(竣工時)→1.37Hz(調査時) 3.42Hz(竣工時)→3.39Hz(調査時)
建設当時と変化なし。ひび割れの発生や導入プレストレスの減少、支承部の損傷などの劣化に起因する剛性低下が生じていない
実施した調査項目と結果。「酒田みらい橋」は供用から約15年、「東京モノレール軌道桁」は供用から約10年が経過した時期に調査し、いずれも高い耐久性を維持していることを確認した(資料:大成建設)
写真3■「酒田みらい橋」で固有振動数を計測している様子。計測用ターゲットを橋の左右に複数個設置して振動を与え、それぞれのターゲットの動きをカメラで捉えて変位を計測した。ターゲットの格子画像のサンプリングによって発生するモアレ縞の位相を解析して微小な変位やゆがみを求める「サンプリングモアレ法」という手法を用いた(写真:大成建設)
写真3■「酒田みらい橋」で固有振動数を計測している様子。計測用ターゲットを橋の左右に複数個設置して振動を与え、それぞれのターゲットの動きをカメラで捉えて変位を計測した。ターゲットの格子画像のサンプリングによって発生するモアレ縞の位相を解析して微小な変位やゆがみを求める「サンプリングモアレ法」という手法を用いた(写真:大成建設)
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