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 ホンダが2020年2月14日に発売した新型コンパクトカー「フィット」(図1)。4代目となるフィットで同社が目指したのは、歴代フィットの優れた性能や機能性を継承しながら、より満足してもらえるコンパクトカーに進化すること。そして、その方向性を見極めるために同社が初めて取り入れたのが、購入相の潜在的なニーズや不満を掘り起こすための、画像を使った同社独自の調査方法だった。

図1 ホンダが発売した新型コンパクトカー「フィット」
図1 ホンダが発売した新型コンパクトカー「フィット」
(撮影:日経クロステック)
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 「コンパクトカーを買おうと思っている人たちに700枚の画像を見せて、『次にクルマを買うときに、クルマに求める価値を表している画像を選んでください』と頼み、その後にそれらの画像を選んだ理由をヒアリングした」。今回の調査方法を開発したホンダアクセス商品企画部 デザイン 研究員の浜田周平氏は、その方法の大筋をこう説明する(図2)。

図2 ホンダアクセス商品企画部 デザイン 研究員の浜田周平氏
図2 ホンダアクセス商品企画部 デザイン 研究員の浜田周平氏
右側が浜田氏。(撮影:日経クロステック)
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 最大のポイントは、画像を使っていることである。潜在的なニーズや不満は、本人すら明確に意識していない。このため、単純にヒアリングするだけでは引き出せない。気づきを与えるきっかけが必要になる。そこで同社が用いたのが700枚という多くの画像だ。画像は「記憶を取り戻させやすく、気づきを引き出しやすい」(同氏)。しかも、画像の場合は、さまざまな言語に置き換えることによるニュアンスの違いが生じない。画像から思い起こすことが国によって違ったとしても、その画像を選んだ理由をヒアリングすることで、何を求めているのかを把握することが可能だ。

 そうした700枚の画像を選ぶ上で同社が意識した点が、「できるだけ直接的でなく抽象的な画像」にすることだ(図3)。クルマに関係のないものばかりだと取っ掛かりがなく選びにくいということから、100枚はその手のものも入れているが、600枚は抽象的なものを集めた。複数の人々の観点を取り入れ、5000枚ほどの画像を収集。その上で、予備調査を通じて画像を700枚に絞り込んだ。予備調査の対象は社内と社外の合計50人。予備調査から分かったのは、選ばれる画像はだいたい決まってくるということだった。

図3 調査に使用した画像の一部
図3 調査に使用した画像の一部
(撮影:日経クロステック)
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 実は、同社はこの調査を4回に分けて実施している。潜在的な不満の調査が2回、潜在的なニーズの調査が2回である。まず、潜在的なニーズよりも引き出しやすい潜在的な不満を調査し、その後に潜在的なニーズを調査する。

 それぞれ2回ずつに分けるのは、候補となる画像の枚数は1度の調査で200枚ぐらいが限界だからだ。画像は横に並べて配置し、それらを眺めてもらうわけだが、「多すぎると感覚が疲労してしまう」(同氏)という。逆に画像が少なすぎると、潜在的なニーズや不満を取りこぼす恐れが高まる。なお、画像を横に並べるのは、人の目は横についているため、そのほうが見やすいからとする。