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 ホンダが2020年2月14日に発売した新型コンパクトカー「フィット」では、ハイブリッド車(HEV)モデルに、同社が中大型車に適用してきた2モーターのハイブリッドシステム「i-MMD」を小型化した「e:HEV」を搭載する(図1)。e:HEVは、インサイトのハイブリッドシステムに対して、補機類を含めて横幅方向と前後方向がそれぞれ20%以上短くなっている(図2)。その小型化に寄与したのが、同社のHEV「インサイト」と比較して軸方向の厚みを12%以上薄くしながら最大出力80kW、最大トルク253N・mを確保した新開発の小型で高出力・高回転の永久磁石(PM)型3相交流モーターだ(図3)。

図1 新型フィットの2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」のカットモデル
図1 新型フィットの2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」のカットモデル
(撮影:日経クロステック)
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図2 e:HEVとインサイトのハイブリッドシステムとの大きさの比較
図2 e:HEVとインサイトのハイブリッドシステムとの大きさの比較
e:HEVは横幅方向と前後方向を20%以上短くしている。(出所:ホンダ)
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図3 インサイトのハイブリッドシステムのモーターよりも軸の長手方向の厚みを12%以上薄くしたe:HEVのモーター
図3 インサイトのハイブリッドシステムのモーターよりも軸の長手方向の厚みを12%以上薄くしたe:HEVのモーター
(出所:ホンダ)
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 モーターの小型化と高出力・高回転化は、(1)ローターの永久磁石の磁力強化と磁束密度の向上、(2)ステーターの耐電圧性能の向上、(3)高回転域でのスイッチング損失の低減、によって実現した(図4)。

図4 e:HEVに搭載された2つのモーター
図4 e:HEVに搭載された2つのモーター
右が発電用、左が走行用。巻き線が施してあるのがステーター、その内周側にローターが配置されている。ローターの外周寄りには穴が開けられており永久磁石が埋め込まれている。巻き線の表面には絶縁用の黄色の被膜が施されている。(撮影:日経クロステック)
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 ローターの永久磁石の磁力強化に寄与したのが、磁性粒子を微細化した高性能永久磁石の採用である。磁性粒子の微細化は、モーターが発生させる熱によって永久磁石の磁性が損なわれる減磁という現象の抑制につながる。そのため、より高回転、高出力でモーターを使えるようになる。

 加えて、ローターに設けた穴に埋め込んだ永久磁石を固定する樹脂に、より強度の高い新開発の樹脂を適用。ステーターにより近いローターの外周側に永久磁石を寄せることで、高まる遠心力を強度を高めた樹脂でしっかりと保持しながら、ローターとステーターの間に発生する磁束の密度を高めた。

 一方、ステーターでは、巻き線に被膜する絶縁用の樹脂に多孔質のポリイミド(PI)を採用。空孔に空気を含むことから被膜を薄くしながら耐電圧性能を高めた。耐電圧性能の向上でより高回転・高出力で使えるようになるとともに、絶縁のための被膜を薄くすることで巻き線の占積率を高め、高出力・高トルク化も図った。

 さらに、モーターを回転させるためのスイッチング制御においても、高回転域では1回転当たりのスイッチング回数を従来の1/5に低減。スイッチングによる損失を低減し、効率向上による高出力化を果たした。同社によれば、従来のモーターのスイッチング制御では、1回転当たりのスイッチング回数は一定だった。新しいスイッチング制御では、スイッチング周波数を一定にしているという。