東京オリンピック・パラリンピックに出場するアスリートが本番でベストなコンディションを出せるように、選手村などあらゆるところでトレーニングを支援する。そのために欠かせない要素の1つがフィットネス機器だ。東京オリンピック・パラリンピックでは、クラウドから制御するIoT(インターネット・オブ・シングズ)フィットネス機器が活躍する。
IoT化でフィットネス機器のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指すのが、イタリアのメーカーであるテクノジムだ。同社は東京オリンピック・パラリンピックでは選手村のフィットネスセンターや競技会場、練習場など約30カ所にテクノジムのフィットネス機器を納入する。オリンピックは1万人、パラリンピックは4000人以上の選手が利用予定だ。
「当社は創業時からITとデザインのイノベーションにこだわり製品を開発してきた」とテクノジムジャパンの三宅紀久コンシューマー事業部長は話す。実際にテクノジムは2000年代前半からジムにサーバーを設置し、フィットネス機器とLANケーブルで接続して機器のデータを収集するといった取り組みを始めていたという。
今回の東京オリンピック・パラリンピックでテクノジムは、フィットネス機器に関するIT活用をより進化させる。「IoTやスマホアプリを使ってデジタル化を進めている。日常的に当社の製品を利用しているオリンピック選手も多く、データを活用して運動を支援していきたい」と三宅事業部長は話す。
クラウド経由でフィットネス機器を操作
テクノジムのフィットネス機器のデジタル化の中核となるのが、運動量や運動メニューを記録するクラウドサービス「Mywellnessクラウド」だ。フィットネス機器の利用状況データを個人単位で蓄積する。スマホアプリ「mywellness」をインストールすると、テクノジム以外の健康管理アプリのデータをすべてMywellnessクラウドに集約できる。
運動量の管理サービスであれば様々な企業が提供している。フィットネス機器メーカーであるテクノジムならではのMywellnessクラウドの特徴はアスリートのコーチやトレーナーといった指導者が利用できる点だ。「フィットネス機器を設置するジムのトレーナーや、プロスポーツチームのコーチなどの利用を想定している。イタリア企業なので欧州のサッカーチームの採用も多い」と三宅事業部長は話す。
指導者がMywellnessクラウドにアクセスすることで、担当するアスリートの運動量をデータで見ることができる。指導者はこれを基にアスリートの運動プログラムを作成し、Mywellnessクラウドに登録する。ランニングマシン(トレッドミル)であれば「3度の傾斜を時速25キロメートルで走る」といったメニューを作成する。
一方のアスリートはテクノジムのフィットネス機器が設置されているジムに出向き、スマホアプリのmywellnessを開いてQRコードなどを利用してフィットネス機器とアプリを連携する。これにより指導者が設定した練習メニューが読み込まれ、機器に設置してある画面にその内容を表示。ランニングマシンの傾斜なども自動で設定する。フィットネス機器との連携にはスマホアプリのほか、機器を設置するジムが配布するICチップが入った時計型のリストバンドなども利用できる。