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 「新規事業が生まれにくい」という話をよく聞きます。人材獲得の支援事業を手掛ける筆者はさまざまな企業の担当者と話すのですが、大企業のように体制がしっかりした組織ほど大変な苦労があるようです。

 考えてみれば、これは仕方のないことです。日本企業は組織の性格としてリスクを嫌いますから、新規事業というリスクテーク(リスクを承知で実行すること)とはそもそも相性が悪いのです。少し前に流行したオープンイノベーションや、大企業がスタートアップ企業に投資するCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の興隆も「事業創出というリスクテークの外部化」と捉えれば、根っこには同じものがあります。

 筆者は大企業のこうした姿勢を合理的だと考えていますし、賛成しています。一方で、外部化することで企業自身の事業創出能力や文化の衰退を招くことを危惧しています。適切な対策を講じ、手痛いしっぺ返しを受けないよう、企業内でもある程度の事業創出には挑戦していく必要があると考えています。

個人に依拠する事業アイデアの危うさ

 とはいえ、新規事業を生み出すのが途方もなく難しいのも事実です。

 まずアイデアフェーズから難所です。その人が出せるアイデアは個人の体験や知見に依拠するものですから、新規事業のアイデアの幅は限定的になります。それをブレーンストーミング(ブレスト)などで補うのですが、同じ企業にいる集団でのブレストではどうしても発想に偏りが出ます。

 事業化するアイデアを絞り込む段階では、必ず「本当にそのアイデアが網羅的に検討されたか」という質問が出ます。限定的なアイデアでは、この質問に強く対抗できません。これは担当者にとって本当に頭の痛い話です。あまねくアイデアを検討するのは、時間的にも人員的にも無理なことは自明なのです。そうかといってとっぴなアイデアは受け入れられにくく、逆に自社になじみのある領域に寄せるのも本末転倒ですから、八方ふさがりになります。

 理想は、「自社になじみのある領域の知見を利用でき、かつ、それなりに新規性のあるアイデア」を「網羅的」に検討できることです。しかし果たしてそのようなことは可能なのでしょうか。