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 新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、東京都への人口流入にブレーキがかかっているというニュースを目にするようになりました。新型コロナウイルスの影響によるリモートワークの普及などに伴い、「住む、あるいは仕事をする場所は東京以外でもよい」と考え始めた人が多いのかもしれません。政府が以前から目標に掲げながら進展が見られていなかった「東京一極集中」の是正につながるのでは、との意見もあります。では、こうした傾向を「転職」という側面で見るとどうなるのでしょうか。

 今回は筆者が所属するアスタミューゼが運営している転職・採用支援サービス「アスタミューゼ転職ナビ」「SCOPE(スコープ)」の登録ユーザーデータ、並びに60万件に及ぶ求人票データを基に、転職を目指す人たちが居住地や勤務地についてどう考えているか現状を見ていきましょう。この2種類のサービスは技術職・研究職といった専門分野の人材向けの転職・採用を支援しているため、日経クロステックの読者にも参考になると思います。

今の居住地から離れてもよいと思う人の割合が変化

 まず、東京都の転入・転出の状況を確認しておきましょう。総務省が公開する「住民基本台帳人口移動報告」によると、8月の東京都への転入者は前年同月比11.5%減の2万7524人、転出者数は同16.7%増の3万2038人で、4514人の転出超過となりました。この転出超過数は、総務省のWebサイトでさかのぼって確認できる範囲で、2013年7月以降最大となっています。

東京都と首都圏3県の転入・転出状況の変化。総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」(2020年9月)を基に筆者が作成。単位は「人」
東京都と首都圏3県の転入・転出状況の変化。総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」(2020年9月)を基に筆者が作成。単位は「人」
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 続いて、転職者の意向を見ていきましょう。現住所とは異なる希望勤務地を入力した登録者の割合を、コロナ禍が本格化する前の2020年1月と2020年9月で比較しました。登録者全体では、今と異なる勤務地を希望した割合は38.3%から36.8%とやや下がっています。ところが現職種を「技術職(IT/通信)」に絞ってみると、37.0%から42.6%へと5.6ポイント上昇しています。

「アスタミューゼ転職ナビ」「SCOPE」で転職時の希望勤務地が現住所ではない登録者の割合の変遷
「アスタミューゼ転職ナビ」「SCOPE」で転職時の希望勤務地が現住所ではない登録者の割合の変遷
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 全登録者の傾向がさほど大きく変わらなかった背景には、「勤務地が変わった際に家族も一緒に移動できるか」という問題や、「どうしても現場を必要とする職種がある」ことなどが推測されます。アスタミューゼが定期的に実施している登録者アンケートで「今の居住地を離れられないのはなぜですか?」と質問したところ、以下のような回答がありました(2020年8月31日実施のアンケート、回答者1064人の中から抜粋)。

  • 病院勤務のため、現場を離れることができません(医療/介護/福祉職)
  • 生産現場があるため(機械/電気/組み込み職)
  • 子どもの通っている学校が変わってしまうので(サービス/小売り職)

 その一方、なぜ「技術職(IT/通信)」の人たちに限ると、現在の居住地以外に転職してもよいという人が増えているのでしょうか。