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 設計者の皆さんは日々、ITツールを使っていることでしょう。機械設計者であればCADを開き、ソフトウエア設計者であればソースコードを書くためのエディターを開いて、電気・電子設計者であれば回路CADを開いているはずです。効率的に仕事を進めるために、ITツールは非常に重要です。活用しない手はありません。効率化だけではなく、品質維持のためにもITツールを使用しなければならない時代になってきています。品質を確保するための仕組みがITツールの中に含まれているためです。さすがに、手描きの図面で出図している企業はもうないでしょう。

 しかし、大切なのはCADをはじめITツールを使うことではありません。過去の図面を参考にしながら必要な部分を流用しつつ、付加価値を創造したい部分を新たに設計していくことにあります。要は、「過去の図面のどの部分を流用するか」という判断と、「その部分を流用する≒図面を描かないこと」を守ることが、設計者にとって最も重要なのです。

 できる限り図面を描かずに、顧客が満足する仕様を検討していく。これがトヨタ自動車の設計者に求められる重要な役割です。過去の製品の仕様や機能を十分に理解した上で、さまざまな部位(ユニット)を選択していきます。この選択は、過去の製品の仕様や機能を十分に理解している設計者にしかできません。

 こうして、設計者はユニットを選択しながら、顧客が満足するような製品の仕様や機能を構築し、過去の図面を組み合わせて、さまざまな付加価値を創造していきます。ただし、過去の図面を組み合わせるだけでは、新たな付加価値を生めず、顧客の要求を満たすことができません。そこで、新規ユニットを設計し、そのための図面を描いていくのです。

なぜ図面やソフトを新たに作るのか

 このように、設計者が過去の製品の仕様を選びながら適切な図面を選択していく方法を採ると、結果的に、余計な図面を描かなくなる上に、図面に対する品質が確実に向上します。

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 皆さんの会社の図面には仕様や機能がほぼ同じであるにもかかわらず、少し形状が異なるだけの図面がたくさん存在しませんか。これは、設計者が過去の製品をよく知らないことが原因です。過去の図面を探すのに時間がかかったり、他の設計者が描いた図面を理解できなかったりした結果、同じような図面を描いてしまうというわけです。

 これは機械設計だけの問題ではありません。ソフトウエア設計も電気設計も同様です。いや、むしろソフトウエア設計の方が深刻かもしれません。ソフトウエア設計の場合、他の設計者が作製したソフトウエアの内容を完全に理解することが非常に難しいからです。ソフトウエアの仕様書や設計書が残っておらず、ソースコードから読み解くしかないケースも珍しくありません。ソフトウエアの内容を解読できなければ、当然、性能や品質を担保できるかどうかが分かりません。そのため、設計者が一からソフトウエアを作製していくことになるというわけです。しかし、これではミスを犯しやすく、品質を担保するために多くの時間を費やさなければなりません。