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 皆さんの設計部門に「標準時間」は存在しますか。私はコンサルタントに転身し、さまざまな企業を支援して約10年がたちますが、設計部門に標準時間を設けていた会社は皆無です。

 本来は、製造部門の1つひとつの作業に対して標準時間を設け、その標準時間通りに生産していかなければなりません。例えば、自動車メーカーの完成車組み立てラインは、車体がある一定の距離を流れる間に部品の組み付けを完了する必要があります。このように、標準時間を設け、その時間通りに生産するからこそ、1日の生産量を正確に把握できるのです。また、たとえものが流れていない生産ラインであっても標準時間を設定し、全体としてはその標準時間通りに生産していきます。

 標準時間の定義は、その時間通りであることです。設定した時間よりも遅く終わってはいけないことはもちろん、早く終わってもいけません。早く終わってしまうと、他の生産工程と連動できなくなり、ある一部の工程で仕掛かり在庫が増加してしまうからです。その場合には、全体の生産ライン構成を見直すことはもちろんですが、「標準時間通りに生産できない理由」を明確にしながら作業改善を行っていかなければなりません。

「標準のないところに改善なし」

 私はトヨタ自動車時代に「標準のないところに改善はない」と言われ続けていました。標準時間を設定していなければ、生産が遅いか速いか分かりませんし、仕掛かり在庫がたまっている理由も分からなくなってしまいます。そこで、まずは作業手順を明確にし、その作業手順で生産した場合の標準時間を設定しておく必要があります。これは、製造改善や生産ライン構築の際に必須のことであり、当たり前のことでもあります。

 製造部門で実施されているこの標準時間や標準作業手順の設定を、なぜ設計部門では実施しないのでしょうか? さまざまな業種の設計者にヒアリングすると、次のような答えが返ってきました。

「製造部門とは違って設計方法は毎回同じではない」

「顧客要求がさまざまだから、それらの要求を予測して標準時間なんて設定できない」

「仮に設定したとしても、その時間通りには設計できない」

「設計は創造的な仕事であるため、時間的な制約を設けるべきではない」

 私も設計者だった時には同じように考えていました。「どうせ、標準時間内に設計できるわけがない。だから、計画日程を適当に設定しておこう」と。

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